トンガ噴火は「脱炭素」を止める理由にならない(下)

南太平洋のトンガ諸島での海底火山噴火で、気温低下や冷害への懸念の声が出てきた。SNS上では、「火山噴火でCO2が排出されるので、気候変動対策をしても無意味」との声もある。文化人類学者の竹村眞一・京都芸術大学教授に緊急寄稿してもらった。

「脱炭素」は単にCO2を減らすことが目的ではない。仮に人類のCO2削減努力を帳消しにするくらい火山がCO2を排出したとしても、それが脱炭素を止める理由にはならない。(竹村 眞一・京都芸術大学教授/オルタナ客員論説委員)

たとえば炭素系燃料(石油石炭、薪木など)からのPM大気汚染に起因する呼吸器障害で、世界では毎年700万人超(WHO発表)ーーつまり「1日平均2万人」が亡くなっている(コロナ以前からの数字だ)。

インドや中国の脱炭素・RE志向の背景にはこうした「人間のサステナビリティ」の問題もある。またGHG排出の25%を占める「食と農」(Food System)ーー森を焼いてハンバーガーにする等、自然資本を消し費やす愚行を減らすことも人類全体の「いのちのサステナビリティ」に関わる。

EcologyでなくEconomyの視点から語ることもできる。日本は年20兆円近い化石燃料代を産油国ほかに支払っており、RE転換はこの経済的制約から自由になる道でもある。パレスチナ問題を始め、一部の資源国に「偏在」した資源ゆえに、世界は絶えざる戦争と地政学的リスクに囚われてきた。

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shinichitakemura

竹村 眞一(京都芸術大学教授/オルタナ客員論説委員)

京都芸術大学教授、NPO法人ELP(Earth Literacy Program)代表理事、東京大学大学院・文化人類学博士課程修了。人類学的な視点から環境問題やIT社会を論じつつ、デジタル地球儀「触れる地球」の企画開発など独自の取り組みを進める。著者に『地球の目線』(PHP新書)など

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キーワード: #SDGs#脱炭素

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