コットンの生産過程で発生している、強制労働や児童労働などの人権侵害が問題視されている。一方で、コットン製品のサプライチェーンでの人権への配慮も加速する。日本では綿花の大半を輸入に頼っているため、多くの人は綿花がどのように栽培され、収穫されるのかを知らない。そこでCSR48は綿花の収穫を体験するツアーを企画した。綿花の生産プロセスを知り、作業を実際に体験することで、労働問題や、人権についてより実感を持って考えることができた。(CSR48・大井美歩)

天空の里山での作業風景。腰の高さほどの木であるためしゃがんで作業する

きっかけは人権のウェビナー

CSR48は2021年4月、人権のウェビナーを開催した。海外事例として、綿花や綿製品の生産過程で発生する、強制労働や児童労働などの人権問題について聞いた。

その解決に向けた様々な取り組みについても話しがあった。現在、繊維産業では、責任あるサプライチェーン管理の重要性に注目し、世界中の企業が人権デューディリジェンスに着手するよう求めている。

日本でも、2021年11月に日本繊維産業連盟と国際労働機関(ILO)が、繊維産業の責任ある企業行動促進に向けた協力のための覚書に署名した。ガイドラインの策定など、繊維産業が直面する課題を解決する動きが広がりつつある。

OECDの衣類・履物セクターにおける責任あるサプライチェーンのためのデューデリジェンス・ガイダンスによれば、繊維の生産工程で生じる悪影響には、児童労働や強制労働、有害化学物質などがある。

福島オーガニックコットン・プロジェクトと天空の里山

福島オーガニックコットン・プロジェクトは、福島県いわき市で始まった活動だ。新しい農業の形をつくり、震災からの復興、無農薬栽培による農地の復活、地域の交流など様々な社会課題の解決に取り組んでいる。

2015年にはグッドライフアワード環境大臣賞優秀賞を受賞した。同市は、過疎化や後継者問題が進むなか、震災が発生したことで更に耕作放棄地が拡大した。

有機農業を行う「天空の里山」が、その志・取り組みに共感し、オーガニックコットンの栽培を行っている。いわき駅から車で15分ほどの山の中腹にあり、その名にふさわしい見晴らしの良い土地だ。オーガニックコットンをはじめ、様々な有機農業を行なっている。

ここでは、綿花の種まきから収穫までの、一連の作業が体験できる。農業者、市民、学校や、ボランティア団体、企業関係者など地域内外からのボランティアが運営している。

綿製品における諸問題と適正な価格について

実際に収穫作業を行ってみると予想以上に手間がかかることがわかった。木の丈が低く下部にも実を付けるため、腰を屈め立ち上がるという動作の繰り返しだ。時間と共に腰への負担が増し、立ち上がって移動をするにも一苦労だ。

摘み取った茶綿

今回、綿花の収穫やその後の処理工程が、いかに労力がかかるか知ることができた。途上国などでは綿花が極端に安い単価で取り引きされている。

収穫量が賃金に直結している場合、短い時間で大量に収穫することが必要になる。そのため、労働者に十分な休憩時間を与えずに、長時間働かせたり、綿木の背丈や綿花の大きさに合う児童を働かせたりすることは想像に難くない。

こうした問題が発生する背景には、労働集約的な産業構造と、綿花や綿製品をできるだけ安く調達したい需要側の思惑がある。

昨今、企業に対して責任ある調達行動が求められている。企業側がデューディリジェンスを実施し、責任あるサプライチェーン管理を進めることで、労働者にとって安心・安全な労働環境を作り出し、十分な収入を生み出す産業構造に変えていける。

自分たちが購入している綿製品が、働く人に適切な労働環境を与えられる価格で取り引きがされているか、消費者として思いを巡らせていくことが大切だと改めて感じた。