「健全な資本主義」は、「健全な民主主義」が前提だ。しかし、その民主主義の基盤が揺らいでいる。2021年1月の米国議会襲撃事件に象徴される「分断と対立」は、世界や日本をも揺らがす。新型コロナによる分断も深刻だ。私たちは、民主主義を守るために何をすべきだろうか。ノンフィクション作家・昭和史研究家である保阪正康さんに聞いた。(聞き手・オルタナ編集長・森 摂、オルタナ編集部・吉田広子、池田真隆、長濱慎、撮影・山口勉)

保阪正康(ほさか・まさやす)
ノンフィクション作家・昭和史研究家。1939年、北海道生まれ。同志社大学文学部卒業。「昭和史を語り継ぐ会」主宰。個人誌『昭和史講座』を中心とする一連の研究で第52回菊池寛賞を受賞。『ナショナリズムの昭和』(幻戯書房)で第30回和辻哲郎文化賞を受賞。『昭和史 七つの謎』(講談社文庫)、『あの戦争は何だったのか』(新潮新書)、『昭和の怪物 七つの謎』『近現代史からの警告』(共に講談社現代新書)、『昭和天皇実録 その表と裏』(毎日新聞社)、『陰謀の日本近現代史』 (朝日新書) ほか著書多数。

岸田政権の「新しい資本主義」をどう考えるか

敗戦国となった日本は戦後、急速な経済成長を遂げた。だが、その結果、「優勝劣敗が極端化し、貧富の差が広がった」とノンフィクション作家の保阪正康さんは指摘する。岸田政権は「新しい資本主義」を掲げるが、保阪さんは「国家も企業も責任の所在があいまいなままで、どのような未来像が描けるのか」、疑問を呈する。

――「健全な資本主義は健全な民主主義に宿る」はずです。資本主義も民主主義と同じく海外から導入されたものですが、「日本ならではの資本主義」はあると考えますか。

日本の資本主義の歴史を振り返ると、最初は政府が官営工場をつくり、軌道に乗ったら民間に移し、民間が事業を拡大しながら発展を遂げてきました。日本資本主義の父とされる渋沢栄一は「論語と算盤は両立する」と唱えました。

ただ利益至上主義で儲かれば良いのではなく、利益を社会に還元していかなければならない。渋沢は論語(理念)のある日本的な資本主義を模索したのです。しかし結局は政治が軍事と一体化し、戦争を国家の営業品目の中に取り入れてしまいました。この過ちをしっかりと論理立てて整理し、議論を深めなければなりません。

戦争で国をつぶし経済で復興へ

――「日本株式会社」といわれるように、政府が主導するのは戦後も同じです。日本にはやはり「親方日の丸」的なところがあります。

政府が事業を興し、民間に払い下げる。あるいは民間が独自に発展していっても、結局は政府が支える構図になっていますね。

1960年代の高度経済成長期には2つの特徴があります。