ウクライナ戦争を受けて、「ESG投資」の意義が問われだした。非財務領域のパフォーマンスから投資先を選ぶESG投資は、軍事やギャンブルなどに投資をしないネガティブ・スクリーニングの動きから始まった。ここに来て、「民主主義」を守るという大義を掲げ、投資方針を見直し、防衛産業への投資を始めた機関投資家も出始めた。防衛産業に投資することは「ESG投資」なのか。(オルタナS編集長=池田 真隆)
金融業界でも「ロシア離れ」は進む。指数算出会社のMSCIとFTSEラッセルは3月2日、主要指数からロシア株を除外した。ドイツ銀行や米国の公的年金基金もロシア市場からの撤退やロシア資産の売却を始めた。
一方で、スウェーデン金融大手SEBは投資方針を見直し、防衛産業に投資できるようにした。投資方針を公開していない機関投資家もいるので、ウクライナ侵攻によって方針を見直した投資家がどれだけいるのかは分からないが、被害が深刻化するにつれ、この動きが加速することが予測される。ESG投資に詳しい、高崎経済大学の水口剛学長に聞いた。
――スウェーデン金融大手SEBは投資方針を見直し、防衛産業に投資できるようにしました。
武器をつくっている産業はダイベストメント(投資撤退)すべきなのかという議論は、警察官も武器を持っているが、それが否定されるのかという議論と似ている。
明確にESG投資やSRI(社会的責任投資)で排除すべき対象としているのは、非人道兵器や核兵器、対人地雷、クラスター爆弾などだ。その理由は、利用することで民間人を巻き込むからである。この方針はこれからも変わらないだろう。
GPIFに次ぐ規模のノルウェー政府年金基金は除外方針を公表している。軍事関連産業すべてを除外しているわけではなく、クラスター爆弾と対人地雷、核兵器を除外対象としている。
つまり、一部に限っては明確に除外対象にしているが、一方で兵器全体を除外してはいないのだ。これについては、良いか悪いかという二元論で見るべきではないと思うが、この方針がESG投資なのかといえば、ESGの源流から考えると私は違和感を覚える。防衛産業の発展が悪いとは言えないが、ESG投資で推奨することには疑問を持っている。
――ウクライナ侵攻でESG投資家たちはどう動くべきでしょうか。