衣類の「廃棄ゼロ」を成し遂げたプラットフォームが日本に誕生した。服のレンタル事業を行うエアークローゼット(東京・港)だ。同社は2015年、国内初となる普段着に特化した月額制のレンタルサービスを始め、会員数は70万人を誇る。リユース・リセール・リサイクルを通して、取り扱う衣類の廃棄ゼロを今年2月から継続中だ。(オルタナS編集長=池田 真隆)

エアークローゼットを立ち上げた天沼社長

エアークローゼットはプロのスタイリストが選んだ服を毎月借りることできる女性向けのサービスを展開する。最安のプランは月に1度、トップスからボトムスまで3パターンのコーディネートが届いて月額7480円から始めることができる。

メニュープラン

利用者のアンケート内容をもとにスタイリストがおすすめのコーディネートを複数提案する。初回に限り利用者はその中から気に入ったコーディネートを選ぶと、3~5日で自宅に届き、1カ月間は自由に着回すことができる。取り扱っている服は300ブランド50万着と豊富だ。新作トレンドから定番までそろえており、服の相場は定価1万円が多い。

3分程度で終わる無料のファッション診断をもとにプロのスタイリストがコーディネートを提案する

着た感想を伝えることで、スタイリストが利用者に合うコーディネートに改良を重ねていく。追加料金がかかるが、スタイリストを指名できたり、服に合ったアクセサリーをレンタルしたりすることもできる。レンタルだけでなく、気に入った服を購入することもできる。

会員数は70万人を誇るが、主な利用者は30~40代の女性で、9割以上が働いている。そして半数は子どもがいる。仕事や家事・育児などで買い物に行く時間が取れない「忙しい女性」のニーズに応え、ファンを増やしてきた。

2014年創業のエアークローゼットの経営陣の平均年齢は30代中盤、会社全体の平均も30歳と若い会社だ。そんな組織を率いる天沼聰社長(42)はロンドン大学で経営学を学び、帰国後にコンサルティング会社で IT・戦略コンサルタントとして約9年間働いた。その後、楽天でウェブ事業のグローバルマネージャーを務め、2014年に起業した。

ビジネスモデルを考えるとき、大局的な視点を大事にすると言う。バブル崩壊後の1990年から縮小を続けるアパレル小売市場の原因をこう分析した。

「日本の服の歴史を調べると、150年程度。当時はすべてがオートクチュールだった。高度経済成長になり、大量生産が求められると一定のロット数を積まないといけなくなった。そうして、一気にサイズの種類が少なくなり、デザインの数も減った。多様化する個人のニーズに合いづらい状態になった」

「さらに情報化社会になるとファッションに費やす時間も減った。いつも決まった色やデザインの服を選ぶようになり、挑戦しなくなった」

それでも天沼社長は、「個人のファッションにかける熱量が下がったわけではない」と強調する。ファッションに費やす時間がなくなったことが原因だと仮説を立て、エアークローゼットを立ち上げた。

忙しい女性たちでもトレンドに合ったファッションを着こなすようになっただけでなく、これまで着なかった色やデザインの服と出合う「きっかけ」にもなっているという。

「試着」以上に着てから買うことができるので、本当に気に入った服しか買わないようになる。その結果、廃棄の削減にも貢献しているという。

天沼社長は、「これまでは『買う』か『買わない』の二択しかなかったが、『レンタル』という選択肢を増やしたことで、本当に気に入ったものだけを買うようになる。すぐに捨てなくなる」と話した。

「SDGsに取り組むことは当然の時代に」

同社が力を入れるのが「サーキュラ―ファッション」という概念だ。従来の生産から消費までの一方通行型のビジネスモデルではなく、廃棄を減らし、汚れて着られなくなった服を再利用するモデルだ。

特に、シーズンごとに大量生産・廃棄を繰り返すファッション業界は「廃棄」の問題を抱える。環境省の調査では、廃棄した服で再資源化した割合はわずか5%程度。廃棄した服の量は年間で48万トンに及び、これは大型トラック130台を毎日処分していることに匹敵する。

国内衣類のマテリアルフロー
エアークローゼットのマテリアルフロー

そこで同社では服を廃棄処分しないで、リユース・リセール・リサイクルを通して「サーキュラーファッション」を構築した。レンタルサービスを軸に、レンタル期間が過ぎたアイテムを専用サイトで会員向けに販売したり、破損や汚れで着用できないものは、廃棄衣料の繊維を原料にするリサイクルボードに活用したりした。

2月24日から現在(4月26日)まで同社が取り扱う服は「衣類廃棄ゼロ」を継続中だ。今後はサーキュラ―ファッションの概念に共感する企業との協業を進めていく考えだ。

天沼社長は、「事業にSDGsを取り組むことは当然の時代になった。ぼくたちは利用者さんのデータを保持しているので、そのデータを活用して廃棄を減らす服作りに貢献していきたい」と語る。現在、数社のアパレルメーカーと実証実験に向けて動いているという。