グローバルコンサルティングファームのアリックスパートナーズ(本社:米ニューヨーク)はこのほど、世界の電気自動車(EV)の普及状況を「累計走行可能距離(e-range)」を用いて分析した。その結果、急速なEVシフトが進む中国が市場をリードしていることが改めて明らかになった。まだ普及率は低いものの、日本も2021年に高い伸びを示した。(オルタナ副編集長・長濱慎)

航続距離と台数の両方がEV普及のカギに

■「累積走行可能距離」では2021年97%の伸び

分析は世界主要73市場の、販売済みEV全タイプ(ハイブリッド車を含む)を対象に行った。

分析に用いた「累計走行可能距離(e-range)」とは「1台あたりの航続距離(1回の充電で走れる距離)×販売台数」を意味する(※1)。バッテリー搭載量と販売台数が増えればこの数値は伸びることになり、国や企業のEVへの取り組みを示す重要な指標となる。

※1:ハイブリッド車の場合は内燃部を除いた電動部分のみで算出

2021年、世界の自動車市場の成長は半導体不足などにより横ばいだったものの、EV単独の新車導入台数は20年比2倍となった。その結果、e-rangeは12億マイル(約19億km)と、20年比97%の伸びを記録した。

台数の増加に加えて、1台あたりの航続距離の伸びもe-rangeを伸ばす結果につながっている。バッテリー車(※2)の平均航続距離は、238マイル(約380km・2021年)に達した。1回の給油で500km以上走行できるガソリン車にはまだ及ばないが、10年前は200km程度だったことを考えると、航続距離というボトルネックの差は着実に縮まっている。

※2:2020年に販売されたEV220万台の約75%がバッテリー車。世界的にハイブリッド車のシェアは縮小傾向にある

■中国はEVと自然エネルギーをセットで普及

地域別では中国が他を上回る結果となり、e-rangeは2021年で123%の伸び率を記録した。約10年にわたり政府主導で行ってきたEVの購入補助がインセンティブとなったようだ。EVの普及は電源の脱炭素とセットで考える必要があるが、中国政府は石炭火力に代わり、2030年までに風力と太陽光の設備容量を400倍以上にする目標を掲げている。

欧州のe-range伸び率は2020年の93%から21年は63%に鈍化した一方で、北米はテスラを筆頭にした新製品導入により21年は80%となった。

日本・韓国も21年は99%の伸び率を記録した。これは国が環境政策としてEVの普及を後押しし、現代自動車「アイオニック5」がヒットする韓国のEV市場がが大きく影響している。

EVの普及率が0.6%(2020年)と低い日本でも、変化が生じている。ブルームバーグの報道(22年1月11日)によると、輸入車のみで見ると21年のEV新車登録台数は8610台で、20年(3238台)の約2.7倍に(数字は日本自動車輸入組合)。米テスラが主力車種の「モデル3」を値下げしたことが、普及に弾みを付けたと思われる。

アリックスパートナーズの東京オフィスで、自動車製造業プラクティスのリーダーを務める鈴木智之マネージング・ディレクターはこう述べる。

「日本においても走行距離が長いバッテリー車の開発が進む一方で、航続距離の短い軽EVなど、多様なモデルを市場に提供することが必要。今後は幅広いニーズを満たす開発が行われ、当面e-rangeは増加傾向をたどるとみている」

地域別のe-range。2021年の97%という伸び率は、中国が大きく後押ししていることがわかる(図:アリックスパートナーズ・プレスリリースより)