5月13日、経済産業省が「人的資本経営の実現に向けた検討会」の報告書として「人材版伊藤レポート2.0」を公表しました。社会のデジタル化や脱炭素化の進展、コロナ禍における人々の意識や働き方の変化など経営環境の変化が顕在化するにつれ、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上に繋げる「人的資本経営」の重要性が益々高まっています。(サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

このような背景を踏まえ、2020年9月公表の「人材版伊藤レポート」は、人的資本経営における日本企業の重要課題を「経営戦略と人材戦略の連動」であると提示しました。

「人材版伊藤レポート2.0」は、この課題克服のためのアイデアや施策を示す実践的なガイドです。日立製作所、伊藤忠商事、ソニーグループなど人的資本経営について先進的な取組をしている19社の企業事例も含まれています。

人的資本経営を本当の意味で実現させていくためには、「人的資本の価値向上」と「人的資本の情報開示」の両輪での取組が必要となります。

前者については、企業が本レポートでも設置を求めているCHRO(Chief Human Resource Officer)の強いイニシアティブの下、(人材戦略上の)全社的経営課題の抽出、動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用、ダイバーシティ、リスキル・学び直し、社員エンゲージメントなどの取組を着実に実行することが重要です。

後者については、今夏にも政府が公表予定の指針を始め、国内外で様々な開示基準の策定が進められており、企業がそれらを意識することは必要です。

しかし、より重要なことは、自社の経営戦略に連動した人材戦略の策定・実行及び成果(KPI等に基づく)について、一貫した人的資本の価値向上ストーリーとして投資家や従業員を始めとするステークホルダーに分かり易く伝えることです。

様々な開示基準が要求する人的資本の情報・データは、そのストーリーを補完するための材料として活用することが望ましいと思います。

人材版伊藤レポート2.0