環境スタートアップ企業のアミカテラ(東京・江東、古賀縁社長)が「究極のバイオプラ」普及に向けて動き始めた。同社の新素材は85〜100%が竹やコーヒーかす、木くずなど植物由来で、自然環境で分解する。事業として成功すれば、サーキュラーエコノミー(循環経済)に一歩近づく。(オルタナ編集長・森 摂、編集委員・栗岡理子)
■植物性のものなら何でも原料になる新素材「モドセル」
いま、石油系プラスチック削減対策として、「バイオプラスチック」に注目が集まる。しかし、バイオマス(生物由来)原料がわずかしか使われていないものや、ポリ乳酸など自然環境では分解しないものも少なくない。
有料化されたレジ袋について「生物由来原料を25%含むだけで有料化の対象外になる」という緩い規制を問題視する向きもある。
そんな中、アミカテラは植物性でかつ自然環境でも分解する新素材「モドセル」(modo-cell)を展開する。モドセルの主原料は、竹などを粉にして取り出した繊維だ。このほかコーヒーかす、製材で出る木くず、ミカンの絞りかす、籾殻、そば殻など植物性のものなら何でも原料になる。
もしゴミになって散乱した場合でも、自然界で分解するため、マイクロプラスチック汚染の心配もほぼない。成型品は使用後に粉砕し、ペレットに戻すことも可能だという。
プラ製使い捨て食器の店内提供を禁止している台湾では、高速道路のサービスエリアやラーメン店など、多くの飲食店が「モドセル製食器」を繰り返し使用している。台湾のコンビニではモドセル製の簡易食器を販売し、それを使ってコーヒーを買う人も多いそうだ。同社の増田厚司代表取締役会長に話を聞いた。
――モドセルを開発したきっかけは何だったのですか。
私が台湾に駐在していたころ、岐阜大学の先生から「雑草からエタノールを作ることに成功した。実験ベースではうまくいったので、商業ベースで作れないか」と相談がありました。もともと私は、室内環境や空気・水汚染の専門家で、バクテリアについても知見があったので引き受け、10トンクラスの設備を作りました。
最初は、バイオエタノールをガソリンに添加することを考えていましたが、各国政府はEVに舵を切ったため、エタノールを作ってもあまり用途がありません。しかも、エタノール精製の過程で大量の残さが出ます。それをなんとか有効利用したいと思っていたところ、台湾人の王正雄と出会いました。
王は台湾で40年以上前に割り箸成型機のメーカーを創業し、トップメーカーに育てました。竹の割り箸を作る過程で大量に残さが出ます。彼はそれを粉にして燃料棒などを作り、有効利用していました。しかし、もっと付加価値の高い食器などはできないかと、一緒にモドセルを開発しました。
以下の主な内容
■熊本県益城町や水俣市で続々と工場を稼働へ
■モドセルは「自然環境下で分解する」ことを検証済み
■モドセルのストローはワタミなどですでに採用
■ソニー系、みずほ系、国際紙パルプ商事などが出資
■「企業は作った後のことまで責任を持つべき」