金融庁は、ESG市場の信頼性向上に向けた監督指針を2022年度内に策定する。2025年には世界の運用資産残高に占める「ESG資産」の割合は3分の1に及ぶとされ、急成長を続ける。だが、各国で「名ばかりESG」が相次いでおり、ESGの基準づくりや監督強化が求められていた。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

ESG市場の信頼性を高めるため年内に監督指針を策定する

ESG投資とは、財務情報に加え、企業の環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の情報も考慮する投資である。

世界持続可能投資連合は2020年時点での総額は、35兆㌦(日本円約4700兆円)と発表した。日本では、JSIF(日本サステナブル投資フォーラム)が約310兆円と発表した。

ブルームバーグは、2025年には世界の運用資産残高140.5兆ドルのうち、ESG資産は53兆㌦(日本円約7100兆円:2020年比151%)と3分の1を超えると予想する。

一方、「名ばかりESG」いわゆる、グリーンウォッシュと呼ばれる事象が発生している。

5月31日、ESG投資を巡り、ドイツ銀行と傘下の資産運用会社DWSに検察と金融当局が家宅捜索に入った。捜索の直後、ドイツ銀行はDWSのCEOの辞任を発表した。

米国の証券取引委員会(SEC)は5月23日、金融大手のバンク・オブ・ニューヨーク・メロン傘下の資産運用会社に対して、ESG配慮について虚偽記載と不十分な情報開示があったとして150万ドル(日本円約2億円)の制裁金を科したと発表した。

こうした中、各国では、ESGの基準づくりや監督強化に乗り出している。EUは2021年3月、資産運用会社に投資先のESG情報の開示を求める開示規則の適用を開始したほか、米国もESGの情報開示を強化する統一基準の導入を目指す。

オーストラリアでは6月14日、企業・市場・金融サービス規制当局であるASICが、グリーンウォッシングを警戒し、投資ファンドや金融商品の提供者に対して誤解を招くサステナビリティの主張に注意するよう警告した。

日本では金融庁が ESG関連の投資信託の監視を強める。金融庁が2022年5月に発行した「資産運用業高度化プログレスレポート 2022」には、ESG投資信託を取り扱う資産運用会社37社に調査を行ったところ、「ESGの専門部署を設置していない」「専門の人材がいない」など「3割の会社でESG投資のための態勢が整っていない実態が浮き彫りになった」と記されている。


6月7日に閣議決定した「新しい資本主義実行計画 フォローアップ」には「ESG市場の信頼性向上に向けて、資産運用会社に対して適切な運用プロセスの構築・明確化や開示の充実、顧客への丁寧な説明などを一層求めていくため、2022年度末を目途に監督指針について措置を講ずる」と明記されている。