オルタナは7月21日、エシカル協会(東京・渋谷)代表理事の末吉里花さんを講師に招き、読者会員向けセミナー「いま押さえておきたい『エシカル消費トピック』」をオンライン開催した。「エシカル消費」とは、人や地球環境、社会、地域に配慮した「エシカル」(倫理的)な消費行動を意味する。末吉さんは「エシカル消費に唯一の正解はない。それぞれの立場や条件のなかで何ができるのか、自ら考え選択することが大切」と強調した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして世界各地を巡ってきたエシカル協会代表理事の末吉里花さん
TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして世界各地を巡ってきたエシカル協会代表理事の末吉里花さん

エシカル協会では、エシカルを「エ(影響を)シ(しっかりと)カル(考える)」ことと定義し、エシカルの本質について自ら考え、行動し、変化を起こす人々を育むことをミッションに掲げる。2022年5月には日本初の『エシカル白書2022-2023』(山川出版社)を上梓した。

代表理事の末吉さんは、「法的な縛りはなくても、多くの人たちが正しいと思っていること。本来人間が持つ良心から発生した社会的な規範こそが『エシカル』。これは古くから日本人が大切にしてきた精神性に近いもの」と説明する。

「エシカル消費を実践するうえで、さまざまな認証ラベルやマークが参考になる。しかし、エシカルな商品を買わなければいけないということではなく、消費者として声を上げていくことも、エシカル消費には含まれる」(末吉さん)

セミナーでは、「エシカル消費」のトピックとして、次の3つを紹介した。

1つ目は、「関心と実践の乖離」。同協会が実施したアンケート調査によると、7割がエシカル消費に関心がある一方で、実際にエシカル消費を行ったことがある人は3割にとどまった。

「背景には、どうやって選んだら良いか分からなかったり、最終的なゴールがイメージしにくかったりして、行動に起こせないということがあるのかもしれない。身近なところからエシカルを取り入れ、成功体験を積み重ねていけるように情報発信していきたい」(末吉さん)。

2つ目は「コミュニケーションと教育」。世界市民会議が2015年に行った調査によると、「あなたにとって、気候変動対策はどのようなものか」という質問に対し、世界では66%が「生活の質を良くする」と答えた。しかし、日本では反対に60%が「生活の質を脅かすもの」と答えた。

末吉さんは、フェアトレードタウンのスウェーデン・マルメ市を視察したとき、「サステナビリティ(持続可能性)の取り組みに楽しそうに参加しているのが印象的だった」と振り返る。

例えば、ある幼稚園のプロジェクトでは、木の板にリンゴの皮や紙、プラスチック、金属など、好きなものをくくり付けて、地中に埋める。しばらくして取り出すと、分解されて消えてしまったり、そのまま形が残ったりするものが目に見えて、体験的な学びになるという。

「スウェーデンは、小さなころから大人になるまで教育の機会が多い。日本でも、2021年から中学の教科書、2022年から高校の教科書で『エシカル消費』が掲載されているが、これらを暮らしと結びつけるような教育が必要になってくる」(末吉さん)

3つ目は、「エンゲージド・エシカル」(社会参画するエシカル)だ。末吉さんは、「お客様の声があると、企業も一歩踏み出しやすくなる。例えば、平飼い卵やフェアトレード商品など、お客様の声を受けて採用されたという成功事例も多く届いている」と話す。

「エシカル消費を普及するうえで重要になるのは、それぞれのセクターがそれぞれの役割を果たしていくこと。消費者も行政も事業者も力を合わせて変えていく。そうしたうねりを協会としても後押ししていきたい」(末吉さん)

◆末吉里花氏(エシカル協会代表理事)
慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。日本全国の自治体や企業、教育機関で、エシカル消費の普及を目指し講演を重ねている。著書に『はじめてのエシカル』(山川出版社)、絵本『じゅんびはいいかい?〜名もなきこざるとエシカルな冒険〜』(山川出版社)ほか。東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事、SOMPO環境財団評議員、花王株式会社ESGアドバイザリーボード、NPO法人FTSN(Fair Trade Students Network)関東顧問、認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパン アドバイザー、ピープルツリー アンバサダー、環境省中央環境審議会循環型社会部会委員(2021.4〜)、鎌倉市エシカル消費推進アドバイザー。