英国ではESG投資の一環として、従業員の「メンタルヘルス」に着目する動きが加速している。7月8日には、運用資産7兆ドルに及ぶ29の機関投資家などが連名で英国の上場企業100社のCEO宛てにメンタルヘルス対応を求める書簡を送った。(オルタナS編集長=池田 真隆)

英国では企業のメンタルヘルス対応に注目が集まっている

なぜ投資家は「メンタルヘルス」に着目するようになったのか。オルタナではこのほど、SBLセミナーを開き、金融庁サステナブルファイナンス有識者会議の委員などを務める岸上有沙氏をゲストに迎えた。岸上氏は英国の投資家がメンタルヘルスに着目するようになった背景や今後の動きについて話した。

首相がメンタルヘルスに特化した調査を指示

岸上氏は、英国の機関投資家が企業のメンタルヘルス対応に着目するようになった背景には、あるレポートの存在があると話した。2017年10月に発表された「Thriving at work」という名の調査レポートだ。これは英国のテリーザ・メイ首相(当時)が同年1月、メンタルヘルスの支援活動を行うMind社のポール・ファーマーCEOらに作成を依頼したものだ。

オルタナ主催のSBLセミナーに登壇した岸上氏

ポール・ファーマーCEOらは、従業員のウェルビーイングを高めるために雇用主は何をすればいいのかという視点で英国の企業を調査した。その結果、メンタルヘルスが原因で仕事を辞めた人は年間で30万人、労働人口の15%がメンタルヘルスに問題を抱えていることが分かった。

経済的観点から分析すると、処方薬の4分の1がメンタルヘルスに関連したもので、同国のGDPの3.6~4.9%に相当した。企業のコストも数値化した。従業員が欠勤する原因の57%がメンタルヘルスに関連したものであり、メンタルヘルスに関する企業側のコストは年間で430~460億ポンドと推測した。

レポートでは「10年後に向けたビジョン」として、メンタルヘルスの予防や対応策を企業が備えて、精神的な問題を抱える人を10万人減らすことを目標に掲げた。こうしたことが英国内で企業のメンタルヘルス対応が注目されだした背景にあると、岸上氏は説明した。

世界経済フォーラムが毎年発表する「グローバルリスク」でも、メンタルヘルスを主要リスクの一つに特定するようになると、ESG投資の文脈でも注目されだす。

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