■記事のポイント
①米国がEV普及のネックであるバッテリーのリサイクルに本腰を入れ始めた
②トヨタ、VW、フォード、ボルボと提携し回収とリサイクルを行う
③EV市場の成長が最も早い欧州でのリサイクルバッテリー供給も視野に


米最大のリチウムイオン2次電池リサイクル企業レッドウッド・マテリアルズ社がトヨタやフォルクスワーゲン(VW)などと相次ぎ提携し、存在感を高めている。テスラの共同創業者・元CTO(最高技術責任者)のJ・B・ストローベル氏が2017年に設立した。クローズドループのバッテリーエコシステムの構築を目指す同社は、電池リサイクル事業として北米最大規模となった。(北村 佳代子)

「低環境負荷と低コストでバッテリーの供給を増やす」と宣言(ホームページより)

■EV普及のボトルネックだった「電池」

米国は2030年の電動化に向けた動きを加速している。バイデン政権もバッテリーの国産化を推進し、製造を拡大しているものの、リチウムイオン・セルや重要な材料のほとんどを海外から調達しているのが現状だ。

米エネルギー省のグランホルム長官は、「このまま輸入に依存していると、米国はクリーンエネルギー技術の競争に敗れる。この市場は、今後10年で最低でも23兆ドル規模に成長すると言われている。黙って見ているわけにはいかない」と述べた(2021年6月米エネルギー省)。

国際エネルギー機関(IEA)は2022年5月に発表した「世界電気自動車(EV)見通し2022」で、電池の価格、特に鉱物資源の価格高騰がEV普及のボトルネックになると懸念している。主な3原料の現状は下記の通りだ。

・リチウム: 埋蔵量は十分あるが需要が集中し、短期的に価格が上昇中だ。

・ニッケル: 埋蔵量に限界のあるレアメタル。産出量の4割を占めるインドネシアなどに遍在している。

・コバルト: 埋蔵量に限界のあるレアメタル。鉱物紛争とされEVにはいずれ搭載できなくなる。

レッドウッド社は、今後のEV車の需要拡大を見据え、ネバダ州リノ郊外に、35億ドルを投じて電池材工場を建設する計画だ。建設中の新工場は、EV車用電池の主要材料を生産する米国初の製造施設の一つとなる。

■米国にとってもEV電池のリサイクルは必須

EV需要が拡大する中でも、米国はEV 電池に使う原材料と中間材をほとんど生産していない。米国内で採掘したリチウムでも、いったん中国などアジア諸国に運び、電池材に加工する必要がある。こうしたサプライチェーンの海外依存がEV車と車載用電池の米国内生産を不安定にするとの懸念があった。

同工場は昨年12月に着工し、24年末までに正極材の生産開始を目指す。リチウムイオン電池に使う銅箔の生産準備も進めており、2025年までに年間でEV100万台分の正極材と銅箔を生産できる見通しだ。

同社は古いノートPCの電池や、テスラの主要なサプライヤーでもあるパナソニックなどの電池メーカーから回収したスクラップのリサイクル事業から出発した。今では年間2万トン超のリチウムイオン電池を回収・分解して炭酸リチウム、ニッケル精鉱、コバルト混合剤などを生産する。

レッドウッド社の新工場から約16キロしか離れていない場所に電池工場を構えるパナソニックは、リサイクル材やスクラップ材だけで作るレッドウッド社製の銅箔を年末までに電池生産に利用する予定だ。

■米トヨタとEV電池リサイクルで本格提携

レッドウッド社は2022年6月、同社のEV用電池のエコシステムに米国トヨタが参画することを発表した。まずハイブリッド車の電池の回収、検査、リサイクルから始める。

その後、北米全体での電池のヘルススクリーニング(性能評価と分類)、データ管理、再生、リサイクルによる電池材料の回収と供給へと拡大する予定だ。その後、両社は、米国での電池材料リサイクルをトヨタの電池生産戦略に組み込む方法を検討していく。

トヨタは2022年3月、ノースカロライナ州に新たな電池生産工場 (TBMNC)に約13億ドルの投資計画を発表した。TBMNCは、2025年の稼働開始を予定しており、4つの生産ラインで年間120万台分のEV用電池パックを生産する。

トヨタは2030年までに世界で800万台のEV車を販売する計画で、その開発に700億ドルを投資する。今後、レッドウッドはTBMNCの近く(米国南東部)に新たなバッテリー材料工場を新設する計画で、新施設からTBMNCへの供給も行う。

■米フォルクスワーゲンの1000ディーラーから電池回収