記事のポイント
- EV化が難しい分野の自動車燃料に、バイオ燃料が普及している
- 地球温暖化対策を含め、世界がバイオ燃料に注目する理由は5つ
- 農業振興のメリットもあり「バイオ燃料が食糧危機を起こす」は誤解
JR西日本が、非電化路線を走るディーゼルカーの燃料を、2030年度を目処にバイオ燃料に置き換えると発表した。自動車についても長距離トラックや高速バスはEV化が難しく、バイオ燃料が次世代燃料の有力候補になっている。日本では地球温暖化対策という文脈で語られがちだが、世界がバイオ燃料に期待する理由はそれだけではない。(オルタナ客員論説委員・財部明郎)

■T型フォードはバイオ燃料で走った
バイオ燃料とは、動植物を原料に製造した燃料をいう。自動車燃料の場合、ガソリンの代わりにバイオエタノール、軽油の代わりにバイオディーゼルを用いる。現在のエンジン技術や、既存の供給インフラを転用できるのがメリットだ。
バイオ燃料は燃やすとCO2などの温室効果ガス(GHG)が出るが、GHGは原料となる植物が成長過程で吸収した量と原理的に一致する。これがよく言われる「燃やしても空気中のGHGを増やさないと」いう理屈だ。
日本では、バイオ燃料を地球温暖化対策に位置付けている。しかしこれは、後になってから付け加えられた一つに過ぎない。本来バイオ燃料には、大きく5つの目的がある。
1)石油代替燃料
1900年代に米国のヘンリー・フォードが自動車を大衆化したとき、燃料はバイオエタノールだった。ディーゼルエンジンを発明したドイツのルドルフ・ディーゼルが最初に使った燃料も、植物油だった。
その後、石油産業が発達したことから自動車燃料の主流はガソリンや軽油になったが、1970年代の石油ショックを受け、バイオエタノールが再び脚光を浴びた。
ブラジルは国内産のサトウキビから、米国は国内産トウモロコシから作ったバイオエタノールをガソリンに混ぜて使い始めた。そこではサトウキビからラム酒を作ったり、トウモロコシからバーボンウィスキーを作ったりする技術を応用したという。
日本も太平洋戦争末期、手に入りにくくなった石油の代わりに、サツマイモからバイオエタノールを作って戦闘機の燃料とした。
■バイオ燃料は食糧危機の原因か
2) 農業振興
第二次世界大戦後の食料不足を受け、欧州各国は農業を保護し食料を増産する政策を推し進めた。農業技術は飛躍的に進歩し「緑の革命」と呼ばれる増産を成し遂げたが、今度は大量の農作物が余る事態になってしまった。