エコホテル巡礼(4)ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園
記事のポイント
- 国内初の「高層ハイブリット木造ホテル」が札幌の中心地に誕生
- 「北海道を体感する」を謳い、「エシカル(倫理的な)」「サステナブル(持続可能性)」を掲げる
- 北海道産の木材を使用し、建物全体をRC造とした場合と比べると、約1380tのCO2の発生を抑制する
■ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園
北海道札幌市中央区大通西1丁目12
電話:011-208-1555
https://www.the-royalpark.jp/canvas/sapporoodoripark/
「北海道を体感する」と謳い、「エシカル(倫理的な)」「サステナブル(持続可能性)」を念頭に掲げた国内初の「高層ハイブリット木造ホテル」が、札幌の中心地に誕生した。
開業は2021年10月1日。開業を挟んだしばらくの間、テレビでは「三菱地所と次へ行こう!」と、印象的なキャッチコピーでコマーシャルが流れていた。
そのとおり、株式会社ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツは、三菱地所株式会社が開発、ロイヤルパークホテルズが運営という形で、札幌に環境型ライフスタイルホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」を立ち上げ、ロイヤルパークホテルズ初の北海道進出を果たした。
■北海道産材を使用した「高層ハイブリッド木造ホテル」
北海道産の木材を使用した国内初となる「高層ハイブリッド木造ホテル」という斬新な取り組みの未来型ホテルは、業界は当然だが、マスメディアにも予想以上の注目が集まっていた。
「ロイヤルパーク」ブランドのうち、ミレニアル世代(インターネット環境で育った1980年~1995年生まれの世代)をターゲットにしたキャンバスラインのキーとなるメッセージは、「MAKE IT HAPPEN、そこに集う、何かが生まれる」と掲げられた。
まさにロケーションも最高、リーズナブルな料金体験、整った個性派の設備、そしてサービスも充実し、使い勝手の良さを誇る宿泊主体のライフスタイル型ホテルである。
とはいえ、環境にも配慮され、地方産業の後押しも課題とし、レストランでは北海道の食文化を楽しめるなど、宿泊主体型とは言え、グレードアップした進化形ホテルである。さらに、ホテルのコンセプトは北海道の魅力に迫る「北海道を体感する」と掲げ、都会のホテルとして旅心を擽った。
ホテルに到着すると、目の前には札幌のアイコンであるテレビ塔が迫りくる位置にある。大通公園に面して札幌の街の中心部に建つことから、観光にも、ショッピングにも嬉しいロケーションにあり、街の数々の名所巡りも徒歩で行けるほどだ。
こうしたアクセスの良さもあり、またソーシャルスペースのラウンジを埋め尽くすように観葉植物が置かれるなど、環境にも優しいサステナブルな配慮も、キーターゲットである感度の高い若い世代にはスムーズに受け入れられているのだろう。
■ルーフトップではグランピングの体験も
建物の1階にはレストラン「HOKKAIDO RESTAURANT KAMUY」があり、ここでは宿泊者用の朝食も用意される。チェックイン・アウトのレセプションとラウンジは2階にあり、カウンターとラウンジ「CANVAS LOUNGE(KOKAGE)」は隣接し、仕切りもなく観葉植物がその役割を果たしている。
窓の外には大通公園の街路樹が並び、ラウンジ空間はその並木の緑との一体感で快適な空間である。
パブリックスペースはBarを含むこのラウンジと1階のレストラン、そして屋上に造られたCANVAS ROOFTOP「Outdoor Living SAPPORO」がソーシャルな雰囲気を演出している。屋上にはウッドデッキの床が敷かれ、ファイヤーピットやソファースペース、グランピングテントなどを用意。中にはハンモックを楽しむ親子の姿も見かけた。
夕陽を見ながら焚火を囲んだ集いやイベントも開催され、10月にはワンドリンク付きの「ルーフトップシネマ」、キャンプ用の燻製料理講習会など、今後はより活動も増えそうである。
ホテルでは重要なポジションを占めるのが食の提供だ。ここでは1階にあるレストラン「HOKKAIDO CUISINE KAMUY」が、北海道を食すとして地元の食材を使い、フランス料理のソースで楽しむ「新しいフレンチ」を提供。 余市町のワインや北海道産の日本酒などで料理とのマリアージュもお薦めだ。
■国内初、高層ハイブリッド木造ホテルの挑戦
繰り返しになるが、「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」は、国内で初めて誕生した高層ハイブリッド木造ホテルだ。建物の構造躯体における木造使用量は1060平方メートル、外装材も含めると約1200平方メートルあり、その8割強が北海道産の木材を使用。建物全体をRC造とした場合と比べると、約1380tのCO2の発生を抑制すると言うことから、地球温暖化抑制への貢献は大きい。
またこのホテルの存在は、北海道の林業振興や地域活性への貢献、さらにターゲットであるミレニアル世代に向けサステナブルや地球環境保護への啓蒙にもなろう。
建物の構造は、1~6階が鉄筋コンクリート造。3~6階については背筋付製材型枠を利用することでローコスト化。天井の木質化を実現。「木質化」とは天井、床、壁等の内装や外壁等に木材を用いることをいい、建築物の構造耐力上主要な部分に木材を用いる「木造化」とともに「木造・木質化」と使われる。
建物の8階はハイブリッド造(鉄筋コンクリート造・木造)、9~11階は純木造で、柱や梁の無い成形な客室となった。印象的だったのは、全室共通でテレビは置かず、懐かしいレコードプレーヤーとジャズのLPレコードが置かれ、ウッドスピーカーを備えていた。
このスピーカーは、ホテルの躯体に使用されたトド松の端材をアップサイクルし、ホテルのために造ったと言うオリジナル品だ。木を通して聞こえる優しい音色は今も耳に残っている。スピーカーのデザインは横濱金平氏で、「Sound Woods、(森の音)」として、木製スピーカーなど、音響健在に地域の木を使っている。
ロイヤルパークの「キャンバス」でのラインは、それぞれに明解なコンセプトを掲げ、ここ北海道ではサステナビリティを主軸に三菱地所グループ全体での取り組みの画期的なショーケースとして存在感を示している。そして秋には、新たに東京銀座に「ザ ロイヤルパーク キャンバス 銀座コリドー」が開業予定だ。
銀座のコリドー外というロケーションから思い浮かぶのは大人のナイトライフ、音楽や酒、グルメなクラブなど。こうして次々と誕生するホテルを見ていると、ここ数年で、新生ホテルは、個性を強く打ち出すようになった。ホテルの有り方も変わりつつある中、全く異なるコンセプトで攻める「キャンバス」ラインの今後が楽しみである。