■第一特集:外形のガバナンス 内面のガバナンス
ESGの重要な柱を形成するガバナンス。その共通の指針として、日本でもコーポレートガバナンス・コード(CGC)が策定されてから7年が経った。2021年6月には2度目の改訂を経て、上場企業にさらなる組織改革や情報開示を迫る。だが、CGCが可視化できるのは「外形のガバナンス」だ。それと同等以上に「内面のガバナンス」が重要だ。
「カビ型不祥事」、根絶への対処法 郷原 信郎(弁護士)
郷原信郎弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所)は「ムシ型」不祥事は一部の悪意がある経営幹部や社員によるもの、データ改ざんや談合は社内にまん延する「カビ型」に分類する。
社外取締役との情報格差を埋めよ 大久保 和孝(公認会計士)
上場企業6社の社外取締役を務める、コンプライアンスと危機管理の専門家・大久保和孝氏は、「ガバナンス改革は取締役会のあり方を見直すことから始めるべき」と訴える。そのポイントは、社内取締役と社外取締役との情報格差だ。
「ノルマ」を廃止、組織に「風」通す 関根 正裕(商工中金社長)
商工組合中央金庫は2016年に発覚した大規模な不正融資事件を受け、貸し付けノルマの廃止など組織風土の改善に力を入れてきた。ガバナンス改革は制度設計など外形だけにこだわらず、従業員の心理的安全性など内面にまで踏み込んだ。
「匿名チャット」で内部通報の壁破る――日産自動車
社内で不正が発覚したとき、世間に訴えられる前に対処・改善することが望ましい。その仕組みの一つが「内部通報制度」だ。日産自動車は匿名チャット形式にしたことで通報件数が増加したという。
心理的安全性は「ESG対話」で――積水ハウス
地面師詐欺事件が発覚した積水ハウスは、2018年を「ガバナンス改革 元年」と位置付け、4年間で27項目の具体的施策を実行してきた。全従業員との「ESG対話」も実施している。
モノ言う株主よりモノ言う社員を――レオパレス21
歪(ゆが)んだ企業風土が不祥事を引き起こす。施工不備が発覚したレオパレス21では利益最優先の体質などがあった。「モノ言う社員」を増やすことで企業風土の改革を目指す。
座談会:ガバナンス改革は「企業文化」から
ESG投資が広がる中、国内企業にガバナンスは根付いたのか。ガバナンスを機能させるには何が必要なのか。運用機関ESG担当者、ESGコンサルティング会社パートナー、大手メーカーESG担当者の3人に語ってもらった。
■トップインタビュー
サーバーの冷却も液体で行う時代
大島 葉子(日本マイクロソフト 執行役員)
マイクロソフトは2030年までの「カーボンネガティブ」や「ウォーターポジティブ」を掲げている。データセンターの100%再エネ化や水の使用量90%以上の削減を目指すとともに、約1100億円を新たな環境技術の研究開発に投資する。
ESGの4本柱、循環経済を推進へ
エイジャズ・ムンシフ(デル・テクノロジーズ CDO)
デル・テクノロジーズは環境負荷を減らす「脱物質化」を軸にサステナビリティを推進する。製品が古くなったときに簡単に貴金属やプラスチックを分離・回収できるように設計し、ビジネスモデルそのものを循環型に変えていくことが最終目標だ。
音力から波力へ、久米島で実証実験
速水浩平(グローバルエナジーハーベスト代表取締役)
慶応義塾大学SFC発技術ベンチャーとして2006年に創業した「音力発電」は22年2月、「グローバルエナジーハーベスト」に社名変更し、循環型波力揚水発電の実証実験を進める。対費用効果が上がれば、世界有数の海岸線を持つ日本で、波力発電のポテンシャルは大きい。速水浩平社長に勝算を聞いた。
LGBTの葛藤、命を守る責任
パトリック・ジョーダン(日本コカ・コーラ 人事本部長)
日本のコカ・コーラシステム全6社がLGBTQ施策を進めている。同性パートナーに配慮した就業規則を整備したほか、同性婚・LGBT平等法の実現を求めるキャンペーンを展開。自身も当事者と明かす日本コカ・コーラのパトリック・ジョーダン人事本部長は、「多様性の尊重は事業の成長に欠かせない」と力を込めた。
■第二特集:温室効果ガス算定、変わる「スコープ3」
環境省は2024年3月をめどに、企業や組織の温室効果ガス(GHG)の排出量のうち「スコープ3」(間接排出)について、「一次データ」(実測値)を使った算定方法の方針を示すことが明らかになった。これまで国内では売上高や取引高と業種平均(産業連関表ベース)の排出係数を基にした推計値によって算定していた。
■第三特集:人権DD義務化、日本の動き鈍く
2022年8月末、国連が新彊ウイグル問題で報告書を出したのを受け、サプライチェーン上の人権問題は企業にとって一層のリスクになるのは必至だ。すでに人権DD(デューディリジェンス)を義務化した欧州などにならい、日本政府も動き出したが、人権DDの義務化にはほど遠い。
■第四特集:35年ガソリン車もHV車も販売禁止
米カリフォルニア州大気資源局(CARB)は8月、2035年以降に販売するすべての自動車を「ゼロエミッション車(ZEV)」とする議案を可決した。35年以降はHV車の販売も禁止とし、PHEVは販売量や電池のみの走行距離に基準を設ける。
■第五特集:核融合は本当にクリーンで安全か
次世代の発電システムとして、小型原発などとともに国が期待を寄せているのが核融合発電だ。海水から燃料を作ることができ、クリーンで安全で実用化も近いとされている。しかし、一つひとつ検証していくと問題が山積みだ。
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[日本] トートバッグのコンポストが人気
サステナブル★セレクション2022
「サステナブル★セレクション」とは、サステナブルな理念と手法で開発された製品/サービス/ブランドを選定し、オルタナが推薦する仕組みです。合格した製品/サービス/ブランドは、オルタナ誌面やウェブサイトでご紹介します。サステナブル★セレクションの一つ星は製品/サービス/ブランドの持続可能性を審査します。二つ星はこれに加えて組織のサステナビリティを審査します。第5期一つ星は追加募集をして新たに3点、二つ星は11点を選定しました。
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