記事のポイント
- テスラに続く「EVの黒船」といわれるBYDの戦略を日本法人社長が語った
- 「BYDは単なるEVメーカーではない」とし、EV社会の構築を目指す
- 2025年までに47都道府県にディーラー100店の販売体制を築く
2023年に日本のEV市場に参入するBYDジャパンの劉学亮(りゅう・がくりょう)社長がオルタナに日本戦略を明らかにした。「EV販売だけでなく、自社開発バッテリーや蓄電池なども拡販し、日本でもEV社会をつくりたい」と表明した。日本では2025年までに全都道府県でディーラー100店体制の構築を目指す。(聞き手・オルタナS編集長=池田真隆)

■「EVバスでEVの安全性を証明した」
――日本のEV乗用車市場への参入を表明しましたが、勝算は。
勝算という話ではありません。BYDが電気自動車(EV)を開発したのは2003年ですので、自然な流れです。1995年に中国・深センでバッテリーメーカーとして創業し、それ以来、モビリティやITに関する様々な製品や技術を世界中のあらゆる産業に提供してきました。
そうしたビジネスの延長線として、EVを開発し、日本では2015年にEVバスに、2020年にEVフォークリフトに参入しました。今回の乗用車市場への参入も突発的な動きではなく、自然な流れです。
――なぜバスから取り組んだのですか。
2012年に深センで初めてEVバスを導入しました。10年前ですから、EVの安全性や航続距離、インフラ設備などへの不安の声は多かったです。
そこで、この不安を払拭するためにEVバスを開発しました。一般の乗用車に毎日乗る人は少ないです。だから、不安を解消するデータを取ることが難しい。けれども、バスは公共交通機関なので毎日走ります。だから、EVの安全性を証明するのに適していると考えたのです。
EVバスは京都や大阪など関西圏が多く、累計65台導入しています。日本市場でシェア7割を獲得しました。目標は2030年に4千台です。EVフォークリフトは累計400台導入しました。
ただし、EVバス4000台を販売しても少ないです。日本にバスは約20万台走っているので、そのうちの4000千台がEVになっても、わずか2%に過ぎません。いま日本で走るEVバスは100台に過ぎません。
――日本でEVバスが進まない要因は何ですか。
価格はガソリン車の倍以上します。しかし、維持費を含めるとコストメリットが出てきます。中国では4~5年で元が取れます。日本では夜間の安い料金で充電すれば、地域によっては1週間持つこともあります。
チャージャーの弱さも指摘されますが、10年前の中国も同じ状況でした。ただし、EVは「一製品」としてでなく、「一産業」で見るべきです。
多くの自動車メーカーにとってEVはビジネスチャンスです。参入する企業が増え、環境も整い、これからハイスピードでEVは普及していくでしょう。
当然、高圧充電をするには、電力会社がどこまで容量を許可してくれるかが問われますが、すでにその技術はできています。BYDのEVバスは110Vで充電すれば4時間でフル充電が可能です。
■2025年までにディーラーを全都道府県に100店舗