英国、食品・日用品など「グリーンウォッシュ」監視強化へ

記事のポイント


  1. 英国の公正取引委員会は、消費財の「グリーンウォッシュ」の監視を強化・拡大する
  2. 「グリーンウォッシュ」は「環境面で優れている」という優良誤認の一種だ
  3. こうした「グリーンウォッシュ」に対する政府による規制は、欧州全体に広がっている

英国の公正取引委員会(CMA)は2023年1月26日、新たに食品、飲料、洗剤、セルフケア用品などの消費財についても、「グリーンウォッシュ」の監視対象とすると発表した。英公取委は消費者保護の視点から、環境への配慮をうたう商品・サービスを対象に、その表現や主張の根拠を精査する。(北村佳代子)

英公取委は21年9月に「グリーンクレームコード(環境配慮の主張に関する指針)」を作成した。22年にはファッション業界を対象に調査し、消費者の誤解を招く不適切な「グリーン」の優位性を主張していた企業3社に警告した。

今回、新たに精査の対象とするのは、食品、飲料、洗濯用や食器洗い用洗剤、トイレットペーパー、歯磨き粉、シャンプー、リンス、ボディウォッシュなどの消費財だ。これら日用品への消費支出は年間1300億ポンド(約20兆円)以上に達する。

消費者の環境意識が高まる中で、多くの企業が、環境への配慮を主張した商品・サービスを販売する。市場調査企業ミンテル社のレポートによると、英国ではそうした「グリーン」な主張を伴う商品の割合が、食器洗い用洗剤で91%、トイレ関連用品で100%に上るという。

英公取委のサラ・カーデル最高責任者は「食品、飲料、シャンプー、洗濯用洗剤、歯磨き粉、掃除用品などは、すべての人の買い物リストに載る生活必需品であり、精査の対象となる」と表明した。

■誤解を招く不適切な「グリーン」主張とは

今回の動きは、欧州で広がる「グリーンウォッシュ」への規制強化の一環だ。「グリーンウォッシュ」とは、環境面で優れていると偽る宣伝や情報発信を指す。英公取委は、英国の消費者保護法の視点から、オンラインサイトと実店舗の双方について、「グリーン」とうたう製品や企業の主張を精査する。

例えば、明確な根拠を示さずに、「サステナブル(持続可能)」や「環境にやさしい」などと表示して包装・販売された商品は、明瞭性に欠けた曖昧な環境表示とみなす。「リサイクル可能」とうたう場合も、消費者に誤解を招く表現かどうか精査する。

カーデル氏は「英公取委は、さまざまな企業を調査し、グリーンクレーム(環境配慮に関する主張)の正確性を確認していく。企業にとってもコンプライアンスを遵守しているのか、今一度見直す良い機会となる」と言う。

■広がる「グリーンウォッシュ」への行政処分

英公取委は21年9月、消費者の誤解を招くリスクを企業が回避できるよう、「グリーンクレームコード」を作成した。翌年1月には、ファッション業界を対象とした調査を始め、7月には、英国で著名なファッションブランド3社に警告した。

警告を受けたのは、「ASOS(エイソス)」、「Boohoo(ブーフー)」、そしてスーパー「Asda(アズダ)」が販売するファッションブランド「George(ジョージ)」だ。

英国では広告基準局(ASA)も、昨年6月にスーパー大手テスコに対し、その広告が「グリーンウォッシュ」に該当するとして撤去命令を出した。テスコは、同社がプライベートブランド「プラントシェフ」で展開する植物由来のハンバーガー等が、「肉より環境に良い」とうたっていたが、同局は「根拠がない」とした。

こうしたグリーンウォッシュに対する規制は、欧州全体に広がっている。欧州委員会は2020年、商品販売のために行われた環境関連の主張の半分以上が「曖昧で、誤解を招く、根拠のない情報」であるとして、グリーンウォッシュへの規制強化を進めている。

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #サステナビリティ

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