「グリーンウォッシュ」を巡って航空会社への集団訴訟相次ぐ

記事のポイント


  1. 企業の広告宣伝が「グリーンウォッシュ」と訴訟される事例が増えている
  2. 米デルタ航空の広告表現に対し米カリフォルニア州の消費者が集団で提訴
  3. 同様の事例はKLMなど航空業界に多いが、すべての産業界に広がる恐れがある

米国や欧州で企業の広告宣伝が「グリーンウォッシュ」であるとして訴訟を起こす事例が増えてきた。米デルタ航空の「世界初のカーボンニュートラルの航空会社になる」という表現がグリーンウォッシュに当たるとして、米カリフォルニア州の消費者らが5月30日、集団訴訟を起こした。同様の事例は他にKLMなど航空業界に多いが、すべての産業界に広がる恐れがある。(オルタナ編集部・北村佳代子)

米デルタ航空はカリフォルニア州の消費者から集団訴訟を起こされた

■「虚偽の表示がなければ、航空券を購入しなかった」

デルタ航空に対する訴訟で原告側は、デルタ航空の謳うカーボンニュートラル計画には、信頼性の低いカーボンオフセットの活用が含まれており、「カーボンニュートラル」といった虚偽の表示がなければ、デルタ航空の航空券を購入しなかったと主張する。

KLMオランダ航空が展開する「Fly Responsibility(飛ぶことの責任)」と題した広告キャンペーンも、消費者を誤解させうる「グリーンウォッシュ広告」であり、欧州消費者法違反だとして、オランダの環境団体が提訴した。

科学的な根拠なしにエコなイメージを想起させる「グリーンウォッシュ」は、規制当局が監視を強化している。航空業界では23年3月、ドイツのルフトハンザ航空による「世界をつなぎ、その未来を守る」というキャッチコピーに対して、英広告基準機構が調査を始めた。

デルタ航空は2021年以来、広告やプレスリリース、SNSや販促物などを通じて「世界初のカーボンニュートラル航空会社になる」という表現を繰り返し展開してきた。今も同社のホームページには、動画とともに同社の主張が掲載されている。

同社は、2020年3月に、カーボンニュートラルへのコミットメントを発表した。同時に、10年間で10億米ドル(約140億円)の投資計画を通じて、クリーンな航空輸送テクノロジーの開発や、温室効果ガス(GHG)排出量や廃棄物の削減、排出量バランスの緩和に向けた新プロジェクトの設立を実行することを公表した。

■原告側は「カーボンオフセットへの依存」を問題視
■増える「グリーンウォッシュ訴訟」、監視も強化
■H&Mの「50%以上サステナブル素材」も訴えられる
■カーボンオフセット利用時の環境主張の注意点とは
■排出量削減を主張する利点とリスクの十分な評価を

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ副編集長)

オルタナ副編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部。

執筆記事一覧

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..