佐賀の公益財団、社会的投資の窓口となり市民活動を円滑化

記事のポイント


  1. 佐賀未来創造基金は県で「社会的投資の窓口」として役割を果たす
  2. 信用を築いていき、寄付された総額は4億円超にのぼる
  3. 団体のネットワークづくりで効率的な共助と自発の体制を整える

グッドガバナンス認証団体をめぐる
 公益財団法人 佐賀未来創造基金

佐賀未来創造基金は2013年の設立以来、県内の市民活動団体への「社会的投資の窓口」の役割を担う。寄付総額は4億円超になるとともに、社会課題ごとに団体間のネットワークづくりも進めてきた。吉村興太郎専務理事は「愚直に仕事してきたことが信頼となり、実績につながった」と話す。(聞き手・村上 佳央=日本非営利組織評価センター、萩原 哲郎=オルタナ編集部)

佐賀未来創造基金設立10周年記念のCSO交流会

――2013年に設立されて10年を迎えました。団体のミッションを教えてください。

佐賀県にはNPOが約400団体以上あります。これらNPOやボランティア団体、老人会、婦人会、消防団といった市民と関わりのある団体を総称して、「CSO(Civil Society Organizations)」と呼んでいます。

彼らの課題は、活動資金や後継者の不足です。そういった課題に対して、自分たちで資金を調達して市民活動団体に助成する市民コミュニティ財団が有効だと考えて、2013年に設立しました。

ミッションは人・モノ・カネ・情報を県内の団体に行き渡らせることです。それを当団体だけで行うのではなく、様々な団体に参画していただいて、みんなで資源を循環させる、社会的投資の窓口としての役割を果たしていきたいと考えています。

■「顔が見える」が重要に

――佐賀未来創造基金の取り組みやこれまでの実績について教えてください。

当基金はCSOや行政、企業、社会的弱者への支援などを行う組織とのネットワークをつくり、それらの団体とのコラボレーションを通じて諸課題の解決に取り組んでいます。中心テーマには子どもの未来支援、地域づくり、災害・防災支援、組織の基盤強化を据えています。

ネットワークづくりでは、たとえば「佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)」があります。ここには54団体が参画していて、これらの団体や行政の担当者は普段から定期的に集まり、お互いに顔の見える関係性を構築しており、県内で災害が起きるとスピーディに動きます。また、普段の防災支援ができる体制となっています。

また令和元年8月に子ども食堂から派生した「さが・こどもの居場所ネットワーク」には30団体が参加しています。

さらに昨年10月に発足した「佐賀県『食』でつながるネットワーク協議会」には「フードバンク」「フードドライブ(こども宅食)」や、空き家を活用して食料品や日用品の保管や受け渡しができる九州では初めての「コミュニティフリッジ」「佐賀女子短期大学」「佐賀県」「佐賀市」など30団体が加盟しており、それぞれが得意なところを出し合い社会課題の解決に取り組んでいます。

このように様々な分野で事務局としてコーディネートさせていただくのが、我々の仕事のひとつだと考えています。

――横のネットワークを広げていくことは、支援をいきわたらせていくためにも重要ですね。

県内には我々よりも現場に近い、中間支援団体に「地域基金」を作ってもらっています。地域基金があると、より地域課題に寄り添ってスピーディな支援ができます。現在3カ所にできています。資源を広範囲に循環させるという思いが、実現できていることを示す取り組みのひとつです。

自発の地域づくりも進んでいます。子どもや家庭の貧困対策として、市内のスーパーでレジの横に「不用品をお入れください」と書いてある「フードボックス」が設置されていました。

ある団体は日本郵便九州支社と契約し、佐賀市北部の14郵便局の窓口に「フードボックス」を設置し、そこで集まったものはコミュニティフリッジやフードバンクに持ち寄られています。

――佐賀県では特徴的なふるさと納税の制度があると聞いています。

「佐賀県のふるさと納税(NPO等指定寄付)」のことですね。窓口は佐賀県ですが、寄付者が応援したい佐賀県内のCSOを指定して寄附することができます。CSOを指定した寄付については、県が寄付額の90%をCSOに寄付として渡しますので、CSOの大きな課題の一つである資金調達が可能となっています。

そこで調達した資金は返礼品の開発や送料が必要ですが、その資金をプロジェクトに沿った内容で、高い自由度で活用することができます。これは佐賀県の独自の制度です。

2015年にスタートしたときは9団体15万8千円でしたが、2021年は93団体9億8千万円となりました。これが活動の原資になっています。これほどの寄付を他の方法で集めようと考えても、難しいのが現状なので、CSOにとっては非常に有用です。

――22年3月末までの実績で、寄付された総額は4億円超となっています。

日本ファンドレイジング協会で学んだファンドレイジングの手法に則って、愚直に仕事することが、今の実績の礎です。当基金は寄付封筒、金融機関への振込用紙、リーフレットの3点セットを手渡ししてのお願いを当初から行っていて、現在もインターネットでの寄付調達と並行して取り組んでいます。

また、事業指定プログラムや分野指定プログラム、冠寄付プログラムなどさまざまな寄付助成プログラムを開発し、社会課題や地域課題ごとに寄付を集めて助成を行っています。

――グッドガバナンス認証を取得してのメリットについて教えてください。

吉村興太郎氏(左から2人目)

公益財団として一番大事にしているのは、社会に対する信用です。寄付をいただくことは、信用がなければ成り立ちません。グッドガバナンス認証をいただいたことは、そういった信用を得ている証になっていると思います。

今、力をいれているのが遺贈寄付です。最近、老齢のご婦人から相続人がいないので万一のときには寄付をしたいとの申し出がありました。自治体、地域社協、法律事務所と相談して遺言公正証書が作成され、亡くなられた後住宅と現金が遺されました。

いま、住宅はリニューアルされ地域の活動団体の拠点(施設名称:傍楽庵)となり、現金はその方が住まわれていた地域の活動団体への助成金となっています。

佐賀未来創造基金への遺贈寄付を行っていただけるよう、法律事務所や金融機関などと連携を進めています。そういった際に信用が確かである必要があります。グッドガバナンス認証はこういった場面で信用の証として機能しています。<PR>

「グッドガバナンス認証」とは

公益財団法人日本非営利組織評価センター(JCNE)が、第三者機関の立場からNPOなど非営利組織の信頼性を形に表した組織を評価し、認証している。「自立」と「自律」の力を備え「グッドなガバナンス」を維持しているNPO を認証し、信頼性を担保することで、NPO が幅広い支援を継続的に獲得できるよう手助けをする仕組みだ。詳しくはこちらへ

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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