三菱地所「SBTネットゼロ認定」国内第一号になれたワケ

記事のポイント


  1. 三菱地所は昨年6月、国内初となる「SBTネットゼロ」認定を取得した
  2. SBTネットゼロ認定は2021年10月にできた新しい認定制度だ
  3. 2年以内にこの認定の取得を目指すと表明した企業は世界で1695社に及ぶ

三菱地所は昨年6月、国内初となる「SBTネットゼロ」認定を取得した。SBTネットゼロ認定は、2021年10月にできた新しい認定制度だ。パリ協定が求める水準に整合した「ネットゼロ目標」を持つ企業を認定するものだが、2年以内にこの認定の取得を目指すと表明した企業は世界で1695社に及ぶ。なぜ三菱地所は日本企業で初めて取得できたのか。(オルタナS編集長=池田 真隆)

SBL月例セミナーに登壇した三菱地所の小林秀樹・サステナビリティ推進部マネジメントユニット担当部長

サステナ経営を推進する上で、国際イニシアティブに参画する企業が相次ぐ。有名なのは、事業運営で使うエネルギーを100%再生可能エネルギーに切り替える宣言をした企業が参画する「RE100」、気候変動リスクに関する開示基準の「TCFD」などだ。

その中でも、「SBT(サイエンス・ベースド・ターゲット)」は重要な気候変動イニシアティブとして、世界の企業から注目を集める。SBTは、パリ協定が求める水準と整合した脱炭素目標を持つ企業を認定するものだ。

SBT認定を受けるには、温室効果ガス(GHG)の削減率を年率4.2%以上とし、5~10年先の目標を設定することが条件だ。SBT認定を受けた企業は世界で2310社、うち日本企業は369社(認定企業数は世界2位)に及ぶ(2023年3月時点)。

SBT認定を取得した企業が増えることで、「ネットゼロ」を強調する企業も増えていった。しかし、ネットゼロの定義は各企業によって異なり、勝手「ネットゼロ」の乱立は問題視された。

特に問題になっていたのは、カーボンクレジットの扱い方だ。カーボンクレジットは削減効果が低いものも多い。クレジットで自社のバリューチェーンの排出量をオフセットすることが疑問視されていたのだ。

そこで、SBTを運営するSBTi(サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアティブ)は、2021年10月、世界で初となる「SBTネットゼロ基準」を設けた。

このネットゼロ基準では、自社のバリューチェーンの削減に、カーボンクレジットを使って、オフセットすることを認めない。スコープ1・2は年率4.2%減、スコープ3は年率2.5%減とし、2050年までにGHG排出量を90%減(基準年は2015年以降)、残り10%の残余排出量を炭素除去(DAC)などと釣り合わせることを求めた。

この基準によるネットゼロ認定を取得した企業は世界で165社、そのうち日本企業は次の7社だ。三菱地所、キリンホールディングス、日本ゼルス、大和ハウスリート投資法人、資生堂、ソニーグループ、ナンバースリーだ。

2年以内にSBTネットゼロ認定の取得を目指すとコミットした企業は世界で1695社に及ぶ。日本企業は52社だ。

世界中の企業がSBTのネットゼロ認定の取得を目指すが、なぜ三菱地所は国内第一号になれたのか。

オルタナが3月15日に開いた、SBL月例セミナーでは、三菱地所の小林秀樹・サステナビリティ推進部マネジメントユニット担当部長をゲストに招いた。小林部長は、国内第一号になれたポイントを3つ挙げた。

一つ目が、SBTのルールを理解すること。二つ目が、社内調整。そして、最後が、検証を行うレビューワーとの対話だ。

担当者として、第一号の認定を取得するまでにどのように対応したのか。SBL月例セミナーでは、取得するまでの経緯を語った。

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #脱炭素

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