「SDGs疲れ」全世代に広がる、意識調査で明らかに

記事のポイント


  1. 意識調査によって、生活者の「SDGs疲れ」とでも呼ぶべき現象が浮き彫りに
  2. SDGsに関する情報発信に「飽きや疲れを感じる」と答えた生活者は62.4%
  3. 今後、情報発信する際には、ネガティブ情報の発信と「対話」が重要だ

オルタナ総研はオズマピーアール(東京・千代田)と、企業のサステナビリティ領域実務担当者と生活者を対象にした「SDGs意識調査」を行った。企業のSDGsに関する情報発信は増えているが、生活者の「SDGs疲れ」とでも呼ぶべき現象が浮き彫りになった。(オルタナS編集長=池田 真隆)

2023年3月でSDGsは「後半の7年半」に入った。これまでの「前半の7年半」でSDGsの認知度が急速に高まった一方、企業が発信したい取り組みと、生活者が求める取り組みには「ギャップ」も見受けられる。

工夫の余地は検索性と表現力

企業のSDGsに関する情報発信に、「飽きや疲れを感じる」と答えた生活者の割合は年代を問わず高く、「SDGs疲れ」が全世代に広がっていることが分かった(図1参照)。

「知りたい情報が探しづらい」(68.6%)「内容が難しくて理解できない」(55.6%)と答えた割合も高かった。生活者のうち、企業のSDGsの取り組みを知った時に、「その企業に好感を持った」が44.4%、「その企業への信用が高まった」が37.4%、「取り組みを覚えた」が31.2%だった(図2参照)。

情報の根拠が不明や信頼性に欠けていると答えた割合も半数を占めていた。企業がSDGsに関する情報発信で期待する上位が、「信用」(85.5%)であり、企業と生活者のギャップが見受けられる。SDGsウォッシュの防止にもつながる「適切な情報発信」の重要性が改めて明らかになった。

ただし、そもそも企業はSDGsに関する情報発信の対象者として、「取引先」(62.8%)「従業員」(62%)に重きを置いている。「一般生活者(成人)」(40・1%)「一般生活者(学生・子ども)」(34.3%)は低い。必ずしも生活者向けに情報を発信していないことが伺える。

SDGs情報が購買の動機に

一方で、生活者向けの情報発信については「積極的に推進するべき」と答えた生活者は78.4%と多数を占めている。調査結果から、SDGsの情報発信が生活者からの好感の獲得や購買に寄与することも分かった。

今後は生活者を重要なステークホルダーと位置付けて、期待に合ったより丁寧で正確な情報発信が求められる。「SDGs疲れを感じている」と答えた生活者に、具体的にどのような時に感じるのか聞いた回答結果は図3の通りだ。

情報の「分かりやすさ」を求める声だけでなく、取り組みの内容をSDGs目標への貢献と紐づけて表現することに違和感を持つ生活者が一定数いることが分かった。

今後は新しい取り組みの紹介だけでなく、具体的目標や成果、極端な表現の見直しなどが重要だ。

今後積極的に取り組むべきSDGsの目標についても企業と生活者でギャップがあった(図4参照)。

企業担当者は全ての期待に応えることは難しいが、生活者と良好なエンゲージメントを構築する手段として、期待に応じて対策やコミュニケーション方法の見直しを図ることも有効だ。

生活者向け調査
◆調査対象: 10-60代・各206人
(男女103人ずつ)の計1236人
◆調査方法: WEBアンケート
◆調査時期: 2023年1月20日(金)─23日(月)

企業向け調査
◆調査対象: 企業のサステナビリティ領域実務
担当者を中心とする138人
◆調査方法: 企業担当者へEメールで
アンケートを送付し回収
◆調査時期: 2023年1月10日(火)─2月14日(火)

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #SDGs

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