記事のポイント
- ドイツは2022年の温室効果ガス排出量の削減目標を達成する見込みだ
- 公式な気候目標を1000万トン下回り、前年から1.9%減少した
- エネルギー部門は増加したものの、農業部門と廃棄物部門が貢献した
ドイツの国際公共放送ドイチェ・ウェレ(DW)は3月15日、同国の2022年の温室効果ガス排出量が、削減目標値を達成する見込みだと報じた。同日にドイツ連邦環境庁(UBA)が発表した排出量の速報値は公式な気候目標を1000万トン下回り、前年から1.9%減少した。エネルギー部門と運輸部門は目標値に届かなかったものの、農業部門と廃棄物部門が貢献し、全体では削減目標を達成した。(北村佳代子)

ドイツは、2030年までに温室効果ガス排出量を65%削減(90年比)し、2045年までにカーボンニュートラルの達成を目指す。UBAの速報値では、2022年に発生した温室効果ガスは約7億4600万トンとなり、1990年から約40%減少した。
一方で、最も足を引っ張ったのはエネルギー部門だ。エネルギー危機の中で、ドイツは石炭輸入量を前年から8%増やしたが、石炭火力発電の使用によってエネルギー部門の排出量は前年から4.4%増えた。
なお、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電は、22年に全体の20.4%に拡大した。
DWによると、2030年目標を達成するために、「再生可能エネルギーの拡大をより速いペースで進めることが不可欠だ。化石燃料への依存は許されない」とUBAのディルク・メスナー会長が述べた。
■エネルギー危機下で懸念された排出量の増加は予想を下回る
ドイツのロベルト・ハーベック経済・気候保護相は、この結果を「勇気づけられる」と評した。「ロシアによるウクライナ侵攻によって、エネルギー部門の数字はもっと悪くなると予想していた」という。
その他のセクターを見ると、農業部門と廃棄物部門では目標を達成したが、運輸部門と建築部門は未達となった。
なかでも排出量が前年から100万トン以上増加した運輸部門は課題だ。2022年には、ドイツ国内のほぼすべての公共交通機関が1カ月乗り放題となる「9ユーロチケット」を期間限定で導入したほか、電気自動車の普及を推進したが、目標には届かなかった。