記事のポイント
- 住友不動産がビルの資源循環を進めるため1年間で3社と連携した
- 入居企業の提案で再生材ゴミ袋導入、保有するビル・マンション230棟超でも
- 22年にはサントリー食品やダイキンとも、ペットボトルや冷媒を循環
住友不動産がビルの資源循環を進めるために1年間で3社と連携した。直近ではTSIホールディングスと連携し、青山のビルに再生材ゴミ袋を導入。これがきっかけとなって、4月には保有するビル・マンション230棟超にも導入した。22年にはサントリー食品インターナショナルやダイキン工業とも連携し、ペットボトルの水平リサイクルや回収冷媒の再生利用に取り組む。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)
住友不動産がオフィスビルの資源循環の仕組みの確立を進めている。
同社が保有する住友不動産青山ビル東館では2月、使用する45リットル以上のゴミ袋を全て再生材ゴミ袋に切り替えた。4月1日には、保有するビル・マンション230棟超についても再生材ゴミ袋を導入した。
きっかけとなったのは、ビルに入居するTSIホールディングスとの対話だ。アパレル事業を展開するTSIHDでは「ファッションロスゼロ」をミッションのひとつに掲げる。資源循環をビジネスだけでなく、入居するオフィスでも進める。
その一環でTSIHDはビルの所有者である住友不動産に「オフィスでの資源循環に向けた取り組みができないか」と提案した。その第一弾として、再生材ゴミ袋の導入が決まった。
一般的に、こういった提案がかなうケースは少ない。オフィスビルの管理はオーナー企業やアセットマネジメント会社から委託された管理会社が行う。ゴミ袋を変えるだけでも清掃作業員の手順が変わりかねず、「対応するのは難しい」と断られることがほとんどだ。
しかし、住友不動産はこの提案を機会ととらえた。企画部ESG推進室の池大樹氏は「当社がビル事業で環境配慮を実現する上で、プラスアルファの取り組みになると考えた」と振り返る。
同社は保有するビルの管理も自社で手掛けている。このことも導入へのハードルを下げた。
両社では今後、TSIHDのオフィスでの廃棄物排出量の定期的・定量的な把握や、分別促進・リサイクル率増加策を検討する。TSIHDの山田室長は「廃棄物をゼロにするためにも、まず廃棄物量の見える化を進めていきたい」と強調した。
■空調冷媒やペットボトルの循環にも着手
住友不動産ではオフィスビルの資源循環について、約1年間で3社と連携した。
22年2月から連携したサントリー食品インターナショナルとは、オフィスビルでの「ボトルtoボトル」に取り組む。新宿区内の3棟のオフィスビルを対象に進める。
6月にはダイキン工業と空調設備の脱炭素化を目指して連携。第一弾として、住友不動産の運営するオフィスビルから空調冷媒を改修して全量を再生利用する循環システムをつくっている。
こういったビルやマンションの資源循環の取り組みは業界内で広がりを見せる。
野村不動産HDはサントリー食品など3社と共同して、管理する19物件でペットボトル一元回収の実証実験を実施した。
マンションなど住宅から出る廃棄物は行政が回収するのに対して、オフィスなどから出る廃棄物は民間が回収する。実証実験を行った19物件では、この回収作業を一元化。野村不HDによれば、一元回収にすることで回収に要する距離が約3割短縮しCO2削減につながったという。
一方で実証実験から「オフィスで回収したものはマンションから回収したものに比べ、異物などが混入したペットボトルが多い傾向が見られた」という。同社ではこれらの結果をもとに、今後の取り組みの検討につなげる。
オフィスで食品ロスの削減に取り組む動きもでている。
第一生命グループの第一ビルディング(東京・品川)は自社オフィス内にZERO(東京・台東)のフードロス削減ボックス「fuubo」を設置した。賞味期限間近の食品などを定価の3~9割引きで購入することができる。今後、同社が所有・管理するオフィスビルなどにも設置していくという。