人的資本経営はWBC世界一「侍ジャパン」に学べ

記事のポイント


  1. WBCで世界一となった侍ジャパンの特徴は「心理的安全性の高さ」
  2. 人的資本経営の実効性を高めるには組織やチームの心理的安全性がカギだ
  3. 心理的安全性に関する取組方針の開示は投資家からの評価にもつながる

侍ジャパンはチームの心理的安全性が高い

侍ジャパンが世界一を獲得したWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が閉幕して暫く経ちますが、いまだに興奮と余韻が残っていると感じます。WBCでの侍ジャパンの試合や関連報道などを見るにつけ、私がつくづく思ったことは「このチームは心理的安全性が非常に高い」ということです。(サステナビリティ経営研究家=遠藤 直見)

心理的安全性(psychological safety)とは、米ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念(心理学用語)です。同教授は、この概念を「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義しています。

もう少し簡単に言うと、「自分の考えや意見などを恐れなく、組織のメンバーの誰とでも言い合える状態」です。「上司に助けを求めたら無能だと思われるのではないか」「この質問をしたら無知だと思われるのではないか」といった考えが思わず頭をよぎってしまうような職場環境は、心理的安全性が確保されているとは言えません。

Googleのプロジェクト・アリストテレス(生産性の高いチームの特徴を解明するために2012~2015年までの4年をかけて実施された社内調査)では、心理的安全性の高いチームこそが生産性が高いということが実証されました。

スポーツでもビジネスでも、心理的安全性が確保されている組織やチームが、メンバーが自分の力を思う存分発揮できて、集団としても最高の成果を勝ち取ることができる、と言えるでしょう。

WBCでの侍ジャパン優勝の要因は、大谷翔平や吉田正尚、村上宗隆など個々のプレーヤーの能力の高さもさることながら、チームの心理的安全性の高さ(及びそれを作り出した栗山監督とコーチ陣の貢献)も大きかったと思います。

人的資本経営の真髄は「心理的安全性」にあり

近年「人的資本経営」に注目が集まっています。旭化成、アステラス製薬、伊藤忠商事など多くの日本企業が各社の特徴を生かした人的資本経営に取り組んでいます。

人的資本経営では、人材を管理や配分の対象である「資源」ではなく、将来にリターンを生む投資の対象である「資本」と捉えます。その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上に繋げる経営のあり方です。

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遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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キーワード: #人的資本

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