記事のポイント
- アドビが、デザインツール「アドビエクスプレス」をNPOに無償提供している
- 人手や資金不足に悩むNPOをクリエーティブ面から支援することが目的だ
- 5月11日には、アドビエクスプレスの使い方講座が開かれた
ソフトウェア大手アドビ(東京・品川)が、オンラインのデザインツール「Adobe Express(アドビエクスプレス)」をNPOに無償提供している。社会課題の解決に取り組む一方で、人手や資金不足に悩むNPOをクリエーティブ面から支援することが目的だ。非営利組織をICTで支援するプログラム「テックスープ」の一環で、5月11日には、アドビエクスプレスの使い方講座が開かれた。(オルタナ副編集長=吉田広子)
テックスープとは、NPOなどの非営利組織を対象に、ICT製品やサービス、ICTに関する知識を提供するプロジェクトだ。1987年に米国で始まり、日本では2009年から、日本NPOセンターがテックスープ・ジャパンを運営している。
アドビは設立当初から「テックスープ」に参画し、2022年にはグローバルで8万9000以上のコミュニティや団体に対し、無償または割引価格で、1億1300万ドル以上相当の製品を提供したという。
■10万点以上のテンプレートで、誰でもデザインが可能に
2022年10月には、アドビエクスプレスのNPO向け無償提供をグローバルで開始した。
アドビエクスプレスとは、デザインの経験や知識がない人でも、直感的にデザインできるオンラインツールだ。10万点以上用意されたテンプレートを使って、チラシやSNS画像などを簡単に作成できるほか、動画編集にも使える。
無料版と有料のプレミアムプランがあり、NPO向けにはプレミアムプランを無償で提供する。NPOが利用するには、テックスープ・ジャパンへの登録が必要で、1団体につき最大10人まで無料で使える。
5月11日に開かれた講座には、NPOのスタッフ12人が参加。イラストレーターの北沢直樹さんが講師を務めた。これまでデザインしたことがない人でも、20分ほどで、チラシやサムネイル画像を完成させた。
参加者の一人、災害・防災教育に取り組む認定NPO法人かながわ311ネットワーク(横浜市)の藤本実和子さんは、防災に関するリーフレットを配る機会が多く、講座に参加したという。
「外部にデザインをお願いすると、どうしても調整の時間やお金がかかってしまう。アドビエクスプレスには、テンプレートや素材がたくさんあるので、自分でも簡単に制作できる。今後はSNSでの情報発信にも力を入れていきたい」(藤本さん)
アドビ広報部デジタルメディア事業広報担当の兼森美紀さんは、「当社はすべての人には語るべきストーリーがあると信じ、より幅広く多様な声を後押しすることで、アドビ自身やコミュニティ、そして世界に変化をもたらすと考えている。テックスープを通じてNPOを支援するのは、私たちのミッションを実現するための活動の一つ」と言う。
さらに「当社の製品はプロ向けのイメージが強いが、より多くの人に知ってもらうきっかけになれば」と話した。