記事のポイント
- NPOと研究者が共同研究を行うプラットフォームが立ち上がった
- NPOの活動の価値を研究者が学術的に証明し、政策提言につなげる
- 設立記念イベントにはNPO担当者や研究者が集まり、NPOの課題を議論
NPOと研究者が共同研究を行うプラットフォームが立ち上がった。非営利組織の取り組みの成果を学術的に分析して政策提言につなげることを狙う。10月29日の設立記念イベントにはNPO担当者や研究者約50人が集まり、NPOやコミュニティ活動の課題を話し合った。(オルタナS編集長=池田 真隆)
複数のNPO代表や大学教授が集まり、「一般社団法人幸せなコミュニティとつながり実践研究所(コミつな研)」を立ち上げた。同団体はNPO担当者や大学教授らに参加を呼びかけ、「実践者と研究者の共同研究のプラットフォーム」を目指す。
団体を設立したのは、NPO法人CRファクトリーの呉 哲煥(ご てつあき)代表理事、上智大学経済学部の川西諭教授、特定非営利活動法人SETの三井俊介理事長、非営利型株式会社Polarisの市川望美取締役、NPO法人コモンビートの河村勇希理事の5人。
同団体は10月29日、上智大学で設立記念イベントを開いた。NPO代表や大学教授、企業担当者ら約50人が集まった。
NPOは活動を通して支援者と受益者の「コミュニティ」をつくっている。そのコミュニティで企業や行政が対応できない課題の解決に取り組む。だが、課題はコミュニティを含めて活動の価値を十分に可視化できていないことだ。
日本にNPOは約5万団体あるが、「NPOのコミュニティを含めて価値を可視化できているのは1%もいない」とコミつな研の共同代表理事を務める呉 哲煥氏は話す。
可視化するには、「共同研究が重要だ」と呉氏は強調した。「研究開発が次の段階につながらない『死の谷』を乗り越えるために、コミつな研では、NPOと研究者のマッチングを図り、共同研究を支援していく。10年、20年を掛けて研究者にも実践者にも価値となる機関になりたい」。
共同研究の成果は論文や書籍にまとめたり、セミナーやシンポジウムで発表したりする予定だ。
「孤立」問題に詳しい早稲田大学文学学術院文化構想学部の石田光規教授も設立記念イベントに参加した。「企業は経済合理性から数値化して組織化してきた。だが、数値化は選別を意味するので注意が必要だ」と語る。
石田教授は数値で組織をマネジメントする際には、その数値が組織の実態と合っているか必ず現場を見ながら決めることが大事だと言う。選別に漏れてしまった人をいかに救うかがカギだ。コミつな研には「NPOがつくるコミュニティの概念を可視化して社会に発信してほしい」と期待した。
孤独・孤立の問題は深刻だ。日本は世界で唯一、孤独・孤立対策担当大臣を設置した国だ。石田教授は日本の孤立問題の背景には「効率化」があるとする。NPOがつくってきたコミュニティの価値を可視化することで、孤立問題の解決に期待したい。