記事のポイント
- ESG投資に関する学術研究のうち7割が「超過リターンがある」と主張した
- ESG投資が財務パフォーマンスに結び付くか研究者によって意見が割れていた
- GPIFが学術研究の結果を網羅的にまとめ、傾向を分析した
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は6月28日、ESG投資と投資パフォーマンスの相関関係を学術的に調べた報告書を公表した。国内外100本弱の研究論文を調べた結果、「ESG投資に超過リターンあり」と主張する論文が7割に及んだ。ESG投資は拡大しているが、投資パフォーマンスの向上に結び付くのか研究者によって意見が割れていた。今回の調査では学術研究の結果を網羅的にまとめ、傾向を分析した。(オルタナS編集長=池田 真隆)

GPIFが6月28日に公表したのは、「『投資におけるESG及びSDGsの考慮に係る俯瞰研究』に関する報告書」というタイトルの資料だ。GPIFが調査を委託したみずほ第一フィナンシャルテクノロジーが資料を作成した。
この調査の狙いは、ESG投資と投資パフォーマンスに関する論点を整理することだ。ESG投資を研究した論文は増えており、それらの学術研究の結果をまとめ、傾向を見出した。
調査対象にしたのは1991年以降に刊行した国内外300本の研究論文だ。各論文を、「超過リターン」「リスク抑制」「エンゲージメント」「企業価値」など6つのテーマに分け、ESG投資との相関関係を調べた。


超過リターンについての研究論文は300本のうち31%を占めた。研究に使ったデータや分析した期間によって、差異は出たが、約70%の論文が超過リターンの存在を肯定していたことが分かった。
報告書では、「多くの研究において、ESGとCFP(Corporate Financial Performance、財務パフォーマンス)の関係はノンネガティブであり、ポジティブな効果があった」と結論付けた。