記事のポイント
- 欧州のNPOが独自動車メーカーの強制労働の関与に対し、告訴状を提出した
- 強制労働に関与したのはフォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツだ
- 米国に続き、欧州でも人権デューディリジェンス関連の法制化が進んでいる
欧州のNPO・欧州憲法人権センター(ECCHR)は6月21日、フォルクスワーゲン(VW)、BMW、メルセデス・ベンツの3社が中国・新疆ウイグル自治区での強制労働に関与しているとして、ドイツ連邦輸出管理庁に告訴状を提出した。2023年1月にドイツで施行された新サプライチェーン法に基づく初の提訴だ。米国のウイグル強制労働防止法に続き、欧州でも人権デューディリジェンス関連の法制化が進む。(オルタナ編集部・北村佳代子)

ドイツの「サプライチェーンにおける企業のデューディリジェンス義務に関する法律」では、大企業は、自社のサプライチェーン上の人権・環境リスクの監視・監督義務がある。違反すれば、年間総売上高の2%以下の罰金や、最長3年間の政府との契約除外などの罰則が適用される。
欧州の人権団体ECCHRは、独自動車メーカー3社に対し、強制労働防止のための調査が不十分だと告発し、寧徳時代新能源科技(CATL)社との関係も問題視した。
中国・車載電池大手のCATLは2022年、新疆ウイグル自治区に、資本金10億元(約1400億円)でリチウムなどの加工処理会社・新疆志存鋰業有限公司を設立するなど、同区での事業を拡大した。
リチウム、アルミニウム、銅など、同区産出の原材料の採掘・部品加工などは、強制労働に加担するリスクの高さが指摘されている。 VWは首府ウルムチ市に上海汽車集団(SAIC)との合弁工場を有する。VWが5月に開催した株主総会では、新疆ウイグル自治区での強制労働を巡る抗議活動で、経営陣にケーキが投げつけられ、議事が一時中断するなどの混乱も生じていた。