記事のポイント
- ネスレがGHG削減において「カーボンオフセットしない」方針を明らかに
- グッチを傘下に持つケリング・グループや英航空会社も同様の方針だ
- 国連事務総長は昨年のCOP27で、安易なオフセットに懸念を表明していた
欧州で、温室効果ガス(GHG)の削減過程において、「カーボンオフセット」を使わないと表明する企業が相次いでいる。ネスレ(スイス)や、グッチなどのブランドを傘下に持つケリング・グループ(フランス)、航空会社イージージェット(英国)などだ。安易なカーボンオフセットに依存し、十分な削減努力をしない企業に対して批判が強まるなか、「脱オフセット」に舵を切る。(オルタナ編集部・北村佳代子)

ネスレ(本社・スイス)は6月28日、温室効果ガスの削減について、「カーボンオフセットを使わない」方針をブルームバーグなどのメディアに明らかにした。今後は、バリューチェーンでの排出量削減・除去に集中する。
「カーボンオフセット」は、植林や再生可能エネルギーの導入などで削減したCO2相当分をクレジットとして排出量取引市場や相対で売り買いし、クレジットを買った企業が自社のGHG排出から「相殺」できる仕組みだ。
■クレジット市場が急拡大するなかで、信頼性に疑問符も
排出量取引市場の枠組みは、1997年の気候変動枠組条約締約国会議(京都会議、COP3)で決まり、すでに世界で普及している。「2037年には世界で1兆ドルに達する」との試算(ブルームバーグ)もある。しかし、クレジットの根拠に問題があるなど、一部で信頼性に疑問符が付いた。
2022年12月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開いたCOP27(エジプト)でも、安易なオフセットに対する懸念が議題に上がり、「GHGの削減は事業領域の中で行うべきもの」との方針を再確認した。
■個々のブランドのカーボンニュートラル目標は取り下げ
■英航空会社は2022年からカーボンオフセットを中止
■ケリンググループもカーボンオフセットから撤退