認証油の拡大へ、小規模農家を支援――サラヤ

アブラヤシから生産されるパーム油は、生産効率が高く、世界で最も多く消費されている植物油脂だ。しかし、熱帯雨林破壊や人権侵害など深刻な問題を抱える。そうしたなか、サラヤは持続可能なRSPO認証油の調達にとどまらず、小規模農家のRSPOへの加盟支援にも乗り出した。

「アブラヤシ」という植物から採れるパーム油は、世界で最も
消費されている

パーム油は世界で最も多く消費されている植物油だ。日本では、スナック菓子やチョコレート、パンなど、食品への利用が85%を占める。残り15%は化粧品や石鹸・洗剤、キャンドルといった非食用だ。最近では、バイオマス燃料として利用される事例も増えてきた。

現在世界では、毎年約7千万トンのパーム油が生産され、年々増加している。その理由は、生産効率の高さだ。1ヘクタールあたりの生産量はパーム油が3.8トンで、大豆油の0.36トン、菜種油の0.59トンに比べ、圧倒的に高い(出典:世界自然保護基金ジャパン)。

一方で、パーム油の最大産地ボルネオでは、急拡大するパーム油需要に伴い、プランテーション(大規模農園)開発が進んだ。ボルネオを覆っていた熱帯雨林は大幅に減少し、多くの動植物が絶滅危機に瀕している。さらに、国際NGOからは、児童労働や強制労働、劣悪な労働環境といった人権侵害も報告されている。

日本で初めてRSPOに加盟

こうしたパーム油をめぐる問題を改善するために生まれたのが、「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)だ。世界自然保護基金(WWF)、マレーシア・パーム油協会、ユニリーバなどが2004年に設立した。世界的に信頼される認証基準の策定や、持続可能なパーム油の生産と利用を促進することを目的としている。

創業以来、社会課題をビジネスで解決することを目指してきたサラヤは、04年にボルネオ環境保全プロジェクトを立ち上げ、05年には日本企業として初めてRSPOに加盟した。

サラヤは2007年から「ヤシノミ洗剤」シリーズの売り上げの1%をボルネオ環境保全プロジェクトに寄付している

10年には日本初となるRSPO認証パーム油を原料にした商品を販売。19年にはパーム油を使用する家庭用製品(国内販売)でRSPO認証を100%取得した。

サラヤはなぜいち早くRSPOに加盟したのか。

「世界が少しでも安い油を求め、大量に消費した結果、熱帯雨林が消失してしまった。安い賃金で働かされている労働者も多い」

「一方で、パーム油は優れた原材料であり、現地にとって重要な産業でもある。単純にパーム油を否定したとしても、問題は解決しない。環境や社会の問題と産業を両立し、持続可能にパーム油を生産・使用していくためのひとつの手段だと考えた」(廣岡竜也・サラヤ広報宣伝統括部長)

パーム油の生産は主に、大企業が運営するプランテーションと、小さな農園を営む小規模農家に分かれる。

大企業は資金力や技術を活かし、持続可能なパーム油生産に取り組み、RSPOに加盟する例が増えてきた。RSPO認証油の生産量は年々増加し、年間約1500 万トン(21年)に上る。

しかし、小規模農家にとって、RSPOへの加盟は簡単ではない。RSPOはアブラヤシ生産面積50ヘクタール以下の農園を小規模農家と定義し、その数は世界で300万人以上いるとされている。

RSPO認証を取得したサラヤ製品

パーム油生産4割小農占める

RSPOは報告書のなかで「世界で使われるパーム油生産の約40%を担う小規模農家の多くは、さまざまな問題に対応できていない。小規模農家は一般的に、専門知識や設備、資金がないため、RSPO認証取得を支援しても時間がかかる」と指摘している。

そこで、サラヤは、マレーシアを本拠とする社会的企業「ワイルドアジア」と協働し、小規模農家のRSPO加盟を支援する取り組み「WAGS」を始めた。

廣岡部長は「知識も資金も乏しい小規模農家は、RSPOの認証スキームに入りたくても、入れない場合が多い。現地で活動していく中で、そうした悩みを聞き、この問題に取り組まなければ、持続可能なパーム油はこれ以上拡大していかないと感じた」と語る。

WAGSでは、小規模農家をグループ化して、組合のような形でRSPO認証取得を目指す。

マレーシア・サバ州では、農薬や肥料を減らしながら、収量を上げる取り組みを実践しているというアブラヤシのみを育てる単一栽培ではなく、多様な植物を栽培して、生物多様性の保全と生計安定を図る活動もある。

こうした取り組みは、ペラックやジョホールバルといったほかのエリアにも広がり、これまで、約4万7千ヘクタールのうち、約2万1千ヘクタールでRSPO認証を取得した。1294の認証小規模農家が誕生し、小規模農家のロールモデルとなっている。

サラヤは17年から毎年、WAGSを通じて、小規模農家からRSPO認証のパーム油とパーム核油のクレジットを購入し、持続可能な生産と認証に向けて小規模農家を支援している。

廣岡部長は「長年、現地で向き合っていくなかで、環境や人権に配慮しようというプランテーションが増えているのを実感している。20年前にはでこぼこだった道路もきれいになり、インフラが整備されてきた。パーム油は産業発展に重要だからこそ、持続可能性を追求していきたい」と話す。

「当社の製品がハブとなって、日本の消費者にもボルネオの問題を知ってもらう。そして、持続可能な製品を選ぶことで、環境や社会に貢献できるということを実感してもらえるように、これからも活動を続けていきたい」(廣岡部長)

(PR)サラヤ

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #生物多様性

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