記事のポイント
- アマゾン熱帯雨林を共有する南米8カ国が「ベレン宣言」を採択
- アマゾンの包括的な森林保護対策を進める連携枠組みだ
- 2030年までに森林破壊をゼロにするという共通目標の設定には至らなかった
アマゾン熱帯雨林を共有する南米8カ国は8月8日、包括的な森林保護対策を進める連携枠組み「ベレン宣言」を採択した。アマゾンが「回帰不能点」に達するのを防ぐために、森林保全や先住民族の権利保障など、113の目標と原則を定めた。しかし、2030年までに森林破壊をゼロにするという共通目標を設定するには至らなかった。(オルタナ副編集長=吉田広子)
ベレン宣言は、ラジル北部ベレンで開かれた首脳会議で採択された。ブラジル、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナム、ベネズエラの首脳が参加した。
アマゾンの熱帯雨林破壊は急速に進んでいる。ブラジル国立宇宙研究所は、2021年8月から2022年7月の1年間で、1万1568平方キロメートルの熱帯雨林が消失したとの推計を発表。WWF(世界自然保護基金)は、アマゾン流域の 17%で森林伐採が進み、回復力を失い、「回帰不能点が近づいている」と報告した。
ブラジルはアマゾンの6割を有する。1月に就任したルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ・ブラジル大統領は、2030年までに森林伐採や森林開拓を終わらせると公約した。ブラジルでの森林伐採は減少傾向にあるものの、依然として熱帯雨林は失われ続けている。
ルラ大統領は、2030年までに森林破壊を終わらせることを8カ国の共通目標にしようと首脳会議で呼びかけていたが、合意には至らなかった。
米シンクタンク国際環境法センター(CIEL、本部ワシントン DC)は9日に声明を発表。原生林を土地転用にさせる工業的農業や石油採掘産業に対するプレッシャーがないこと、先住民族の権利を脅かしている状況に対して、懸念を示した。