記事のポイント
- パーム油は、熱帯雨林の伐採や生物多様性への負の影響が問題視される
- C16バイオサイエンシズ社が微生物によって、パーム油の代替製品を開発した
- 「パームレス」を使った化粧品も発売し、日本を含むアジアへの進出をめざす
化粧品や食品などさまざまな製品に使われるパーム油は、熱帯雨林の伐採や生物多様性への負の影響が問題視される。米スタートアップのC16バイオサイエンシズ社は、微生物を使ったバイオテクノロジーで、パーム油の代替製品「パームレス」を開発した。「パームレス」を使った化粧品も発売し、日本を含むアジアでもコラボレーションの機会を模索する。(オルタナ編集部・北村佳代子)
パーム油はアブラヤシの果実から得られる植物油だ。カップ麺、お菓子、アイスクリームなどの加工食品や、口紅、石けん、洗剤など多くの製品に含まれる。
世界のパーム油の85%近くを生産するインドネシアやマレーシアなどでは、パーム油農園の開発のために熱帯林が破壊されており、生物多様性にも負の影響を与えることが問題視されてきた。近年では、生産国の地域住民や労働者への深刻な人権労働問題も指摘される。
こうしたパーム油の問題を解決するために、米国のスタートアップ企業・C16バイオサイエンシズ社は2017年から、微生物を使って、パーム油の代替品の開発を続けてきた。社名の「C16」は、パーム油の主成分である炭素数16の脂肪酸から命名したものだ。
同社は、野生型の酵母微生物を使い、微生物による発酵プロセスの中で、パーム油と同等の機能を持たせた代替油を発明した。そして商業生産に向けて5万リットル規模の発酵に成功し、2022年11月にパーム油の代替品「パームレス」を発売した。
オルタナの取材に対し、同社はここまでの道のりを振り返る。
「バイオプロセスごとに非常に特殊な装置を必要とするが、ロスを最小限に抑え、最適化を図りながら、プロセスの実験を何度も繰り返すのは大変だった。しかし、大量生産に向けた課題を乗り越え、どの企業よりも早く5万リットル規模での生産が実現してうれしく思う」(同社広報・マーガレット・リチャーズ氏)
現在35人のスタッフが集うC16バイオサイエンシズ社は、ビル・ゲイツ氏の出資する気候テック向け投資企業ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ社など複数の投資家から総額2400 万米ドルの資金を調達した。
同社は現在、さらなる生産規模の拡大と同時にコストの削減に注力する。
■パーム油を使わない化粧品、そして食品も視野に
■パーム油の環境問題を解決するために