アストラゼネカ、ヘルスケア業界のGXとDX促す

製薬大手の英アストラゼネカは、ヘルスケア業界のGXとDXに取り組む。官民連携を促し、脱炭素を軸に世界中の保健医療システムの強化を目指す。同社のサステナビリティ責任者がその構想を寄稿した。

アストラゼネカ グローバルオペレーション&IT担当 エグゼクティブバイスプレジデント兼チーフサステナビ リティオフィサーのパム・チェン氏

地球の健康と人間の健康は互いに深くつながっているという認識が、世界中で広まっています。毎年、約1400万人が環境要因による健康リスクで命を落としており、そのうち700万人は大気汚染が原因だと報告されています。

この危機に対処するために、グローバル・コミュニティが一体となって行動を起こすことが急務です。まず必要なのは、非感染性疾患(NCDs)の増加など、気候が健康に与える影響に対処できるよう、保健医療システムの強靭化を加速していくことです。

ただし、気候が健康に与える影響以上に、私たちヘルスケアセクターが世界の温室効果ガス(GHG)排出量の約5%を占めていることを省みなくてはなりません。

そのため、保健医療システムをより強靱にする取り組みと並行して、私たちは温室効果ガスの排出量削減に向けたより大胆な行動を起こし続け、「ネットゼロ・ヘルスケア」への取り組みを加速していかなければならないのです。

大胆な官民連携、30カ国に広がる

パートナーシップを結んで取り組んでいくことが、これらの優先事項を実現するために、重要な役割を果たすでしょう。直面する課題の規模を考えると、官民を超えた大胆な連携が必要です。

現在進行中のパートナーシップとその進捗は、協働することで現状に変化をもたらせることを示す強力な例となります。

その一例として挙げたい取り組みが、エビデンスに基づく政策によって世界中の保健医療システムの強化を目指す「保健医療システムの持続可能性と強靭性の向上のためのパートナーシップ(※PHSSR)」です。 ※Partnership for Health System Sustainability and Resilience

アストラゼネカが2020年に世界経済フォーラムとロンドン・スクール・オブ・エコノミクスと連携して立ち上げ、現在日本を含む30カ国以上で展開されているこのプロジェクトは、パートナーシップへのコミットメントが指針となっています。

日本におけるPHSSRプロジェクトは、G7グローバルヘルス・タスクフォースの提言と密接に連携した政策提言を行い、日本の保健医療システムの強靭化と持続可能性を推進する上で、主導的な役割を果たしています。

文書のデータ化、3千万枚を節約

アストラゼネカでは、フラッグシップ・プログラムである「アンビション・ゼロカーボン」を通じて、自社事業とバリューチェーン全体の脱炭素化を推進しています。

2026年までに全世界の事業所と保有車両からの排出量を98%削減する計画であり、2030年までにバリューチェーン全体の排出量を半減し、遅くとも2045年までにネットゼロ達成を目指しています。

このグローバルな取り組みの一環として、アストラゼネカは日本でもデジタルイノベーションなどを活用し、大胆な進展を遂げています。一つの事例として、日本政府の規制変更に伴い、当社の製品に同梱していた紙の添付文書をいち早く、すべてデジタル化しました。

製品の添付文書をデジタル化したこと で3千万枚の紙を節約した

この取り組みによって、コスト削減と業務の簡素化が実現し、年間180トンの廃棄物と3千万枚の紙が節約されました。節約された紙の量は、4500本の樹木に相当します。日本で達成されたこの素晴らしい取り組みは、海外でも優れた事例として活用されています。

システムの強化、脱炭素と同時に

私たちが行っている取り組みは、一つの結論を明確にしています。即ち、保健医療システムの強靭性の構築と「ネットゼロ・ヘルスケア」を加速させるという私たちの目標は相互補完的なのです。

人々と地球どちらも健康な未来を築くためには両者のコラボレーションが必要不可欠であるということです。


「アンビション・ゼロカーボン」掲げる

国内全拠点でRE100を達成した

アストラゼネカ日本法人でも、「アンビション・ゼロカーボン」達成に向け、脱炭素化の取り組みを積極的に推進している。その一つがRE100だ。

アストラゼネカは日本において、大阪に本社、東京に支社、そして滋賀県米原市に工場を構えている。
2021年5月の東京支社移転に伴い、新しく入居したオフィスビルで実質100%再生可能エネルギーに
切り替えた。米原工場では、工場敷地内にソーラーパネルを設置し、2022年4月から稼働を開始した.

大阪本社は2022年9月から、入居するグランフロン国内全拠点でRE100を達成したト大阪において、実質100%再生可能エネルギー電力の利用を始めた。

これにより国内の全拠点が自社の太陽光発電もしくは電力会社を経由した再生可能エネルギーの利用によるRE100を実現することになった。

EV100(電気自動車100%)達成に向けた取り組みも展開している。約1800台の営業車両を利用しているが2025年末までにすべて電気自動車(EV)に切り替える計画を2021年に発表した。

2021年10月から納車を始め、2021年末までに111台(6%)、2022年末までに850台(46%)を、電気自動車に切り替えた。一方で、充電インフラや充電効率の課題を残す。自社のEV100達成だけでなく、日本社会全体におけるEVの充電インフラ構築に寄与し、パイオニアになることを目指し、様々なパートナーと協力しながらこの取り組みを推し進める。

次なるチャレンジは寒冷地におけるEVの導入だ。北海道、東北、上信越、北陸などの降雪地で、4WDのEVを今後導入すべく、パイロットテストを今後行っていく。<PR>

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード: #脱炭素

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..