記事のポイント
- ユニセフなどは2024年の児童労働人口が約1億3800万人にだったと公表した
- そのうち、有害な労働に従事する子どもは約5400万人に上ると指摘した
- 児童労働の撲滅を掲げたSDGs目標は「達成されない見込み」とユニセフ
ユニセフと(国連児童基金)と国際労働機関(ILO)は6月11日、児童労働に関して調査した報告書を公表した。報告書では、2024年に約1億3800万人の子どもが児童労働に従事していたとし、そのうち、有害な労働に従事した子どもは約5400万人だったとまとめた。SDGsでは、「目標8」で2025年までにあらゆる形態の児童労働を撲滅するという目標を掲げているが、ユニセフは「達成されない見込み」とした。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

市場で売るため、飲料やカゴを運ぶ女の子たち
(ベナン、2025年3月13日撮影)
ユニセフとILOがこのほど公表した報告書は、「児童労働:2024年の世界推計、傾向と今後の課題(原題:Child Labour: Global estimates 2024, trends and the road forward)」。この報告書によると、2016年から2020年にかけて児童労働は急増したが、2020年以降、2000万人以上減少し、状況は改善に向かったとまとめた。
■30年に児童労働ゼロ、削減率を11倍速める必要が
しかし、児童労働に従事者する子どもは減ってはいるが、いまだ1億3800万人が働いており、2025年までにあらゆる形態の児童労働を撲滅するというSDGsの目標は「達成されない見込み」だとした。2030年までに達成するには、現在の削減率を11倍速める必要があると指摘した。
報告書によると、児童労働が最も多い産業は農業部門で、全体の61%を占めた。続いて、家事労働や市場での物販などを含むサービス部門(27%)、鉱業や製造業などの工業部門(13%)だった。
地域別では、サハラ以南のアフリカ地域が最も児童労働が行われていた場所となった。同地域で、全世界の児童労働人口の3分の2に当たる約8700 万人の子どもが働いていた。紛争や極度の貧困、社会的保護制度の疲弊などを背景に、総数は横ばい状態が続いている。
児童労働を撲滅するには、無償教育への投資に加えて、成人のディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)も有効だという。
ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、「法的保護措置の適用、社会的保護の拡大、質の高い無償教育への投資、成人のディーセントワークへのアクセス改善によって、児童労働は撲滅できる。しかし、世界的な資金削減により、これまで苦労して積み上げてきた成果が後退する恐れがある。改めて取り組みを強化しなければいけない」と強調した。