記事のポイント
- 『22世紀から回顧する21世紀全史』という本を読んだ
- この本はトヨタ自動車のある技術系役員から紹介されたものだ
- 2112年に100年前を振り返りながら、21世紀を回顧する未来の歴史書だ
最近は初夏を感じるこのごろだけど、夜は読書に限るということで、面白い本をいくつか紹介したい。まずは古代生物学者である「スティーヴン・ジェイ・グールド先生」が書いた『ワンダフルライフ』だ。カンブリア紀の生物多様化の話だが、自分たちのルーツとは思えないほど、奇妙奇天烈な生き物たちの進化が書かれた本だ。(自動車ジャーナリスト=清水和夫)
その化石がカナダの化石層(バージェス頁岩)から発見されたという話だが、時空を超えたスケールの生物史は興味深かった。カンブリア紀は生物大爆発と言われた時代だが、まだ地上に上がる生物は存在せず、すべての生き物が海の中で暮らしていた。3つ目うなぎが本当に存在したかどうかは定かではないが、多様性の時代という文脈として捉えるべきか。
いずれにしても進化は「偶然性」と「必然性」とし、「カンブリア紀のテープを巻き戻して再生したら、違う結果になる」という有名なレトリックを示した。私はそれ以来、自動車が多様化する様子を自動車のカンブリア紀として捉えている。
実はもう一つ紹介する本は、なんとも生々しい未来予測の本であるが、この本のタイトルは『22世紀から回顧する21世紀全史』というもので、この本はトヨタ自動車のある技術系役員から紹介された。
■「小泉首相も読んだみたい」
「清水君、こんな本知ってるかい?あまりにも面白いので奥田さん(当時のトヨタのCEO)に紹介したら、たちまち内閣諮問会議のメンバーに知れ渡り、小泉さんも読んだみたいだよ」と薦められた。
きっと小泉純一郎首相(当時)も読んだと思うが、その内容は米国政府にとっては刺激的なので、CIAやFBIも読んでいたに違いない。その内容は2112年に100年前を振り返りながら、21世紀という時代を回顧する未来の歴史書なのだ。ちょうど今から87年後の人々が現在社会をどのように見るかというSFっぽく書かれている。
例えば人間のモラルや価値観を根本から変えてしまうバイオ革命、情報化時代に起きたネットワーク革命、資本主義の終焉を考えさせる世界恐慌。宇宙開発などの影響で世界秩序がどう変化するのか。実は日本人にはちょっと辛いことも書かれていて、ドキッとする場面もある。
著者はNASA火星探査プロジェクトの中心メンバーのジェントリー・リー。そして、ポップグループのギター兼キーボード奏者からサイエンスライターに転身したマイクル・ホワイト。
著者の一人であるリー氏は南北戦争で有名なリー将軍の子孫と聞いてますます興味が湧くではないか。未来予測は仮説が重要だが、本書はその仮説が素晴らしいのである。入念な調査に基づき、科学的な根拠から仮説を描き、未来を予測する。
ちなみにChatGPT に87年後を聞いてみるとどんな答えが返ってくるのだろうか。きっと次のように答えているに違いない。
・国民国家の形が変わる
・企業やAIが国以上の力を持つ
・地球規模課題に国境が意味を失う
・宇宙時代の到来
・文化的多様性と新しい文明圏
人生にとって良き本と出会えることはとても有益なのである。