参院選で確認したい各党の政策②自民「外国人の権利」触れず

第27回参議院議員通常選挙の投開票が、7月20日に行われる。参院の定数248のうち、半数124を入れ替える選挙を実施する。今回は東京選挙区の非改選欠員1(任期3年)を加えた計125議席を争う見通しだ。投開票を前に、オルタナ編集部は各政党のサステナビリティ領域の方針を、3回に分けてまとめた。2回目は難民支援協会(東京・千代田)の分析に基づき、難民や外国人労働者の人権について紹介する。(オルタナ輪番編集長=吉田広子)

難民支援協会は、参院選に向けて難民保護や外国人の権利保障や共生に関する政策を分析した。参議院で議席を有している政党を対象に、7月3日時点で公開されているマニフェストを参考にした。

各政党の公約の抜粋は次の通りだ。

難民協会がまとめた各党のマニフェスト
難民協会がまとめた各党のマニフェスト

【自由民主党】

難民保護に関する政策 <該当する政策なし>

外国人の権利保障や共生に関する政策 <該当する政策なし>

在留管理の強化や送還促進に関する政策

近年、指摘されている外国人による運転免許切替手続きや不動産所有などの諸問題について、法令に基づいて厳格かつ毅然として対応するとともに、「違法外国人ゼロ」に向けた取組みを加速化します。<ビジョンIII. 揺るぎない日本>

外国人に関するその他の政策 <該当する政策なし>

【公明党】

難民保護に関する政策

長期化している難民認定申請の処理については、標準処理期間(6ヶ月)内での処理が実現できるよう、審査の効率化を図るとともに、審査に従事する人員の確保に努め、難民及び補完的保護対象者の認定制度全体として、真に保護を必要とする者をより一層迅速かつ確実に保護すべく、審査体制を整備します。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

生活相談や日本語教育、就労支援など、関係機関が連携して条約難民・補完的保護対象者・第三国定住難民への支援をきめ細やかに実施するとともに、周知・広報を一層図ります。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

外国人の権利保障や共生に関する政策

外国人やその子どもたちが日本語を学ぶ機会の充実と日本語教育水準の向上をめざして、認定日本語教育機関の拡充、日本語教育空白地域の解消へ向けた支援に取り組みます。高等学校での「特別の教育課程」による日本語指導の取り組み強化や、高校入試や進路・就職相談支援の充実など、多文化共生社会を加速させます。また、外国人学校における外国人の子どもの健康確保のため保健衛生対策の取り組みを進めます。<2④ 誰一人取り残されない学びのセーフティネット>

性的マイノリティのほか、障害者や外国人等への偏見・差別の解消、インターネット上を含めたいじめ・虐待・貧困等の人権問題解消を強力に推進します。ヘイトスピーチ及びヘイトクライムの根絶に向けて、省庁横断的な対応体制を構築します。<4⑧ 犯罪防止対策と人権擁護に向けた司法の充実>

外国人が活躍できる社会に向けて、「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」等に基づく施策を着実に推進します。特に、日本の文化やルール等を周知するためのオリエンテーション、相談支援、日本語教育支援、就労支援等の受入れ環境整備のための施策をさらに行います。加えて、マイナンバーカードと在留カードの一体化の早期実施を推進します。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

多言語による災害に関する情報発信等、外国人が必要な情報を入手できる環境整備に取り組みます。また、SNSの特性を活かした災害情報の発信を強化するとともに、社会的混乱防止のため、誤った災害情報やデマ等への対策を講じます。<7③ 被害者支援の充実>

日本で生まれ育ち、納税の義務等を果たしている永住外国人の方々への地方参政権の付与については、国民の理解を得ながら丁寧に検討を進めます。<10 ① 議員改革・政治改革>

※ その他、国内人権機関の設置やヘイトスピーチ解消法の評価、労働者としての権利性向上に関する政策もあります。

在留管理の強化や送還促進に関する政策

外国人の社会保険料等の未納状況に係る情報を在留審査に適切に反映させるなど、外国人の社会保険料等の未納を防止するために必要な仕組みの構築を検討し、さらなる在留管理の高度化をめざします。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

電子渡航認証制度(日本版ESTA)を早期導入して厳格な出入国管理と円滑な出入国審査を両立させるとともに、その導入に伴い、DXにより入国から出国までの情報の一元的管理を実現し、必要な人員を確保するなどして、在留審査の迅速化を図り、外国人の在留状況や受入れ環境を把握することで在留管理の高度化や在留支援の充実化を推進します。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

2024年6月に全面施行された改正入管法の規定を適切に運用し、送還忌避者の縮減に取り組みます。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

不法滞在者ゼロを目指し、外国人と安心して暮らせる共生社会を実現する「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を着実に推進します。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

外国人に関するその他の政策

専門学校や養成施設の整備、女性が働きやすい環境づくり、建設シニアや外国人技能労働者などの育成を推進します。<1⑮ 持続可能な建設業の実現>

自動運転トラックの開発、自動物流道路や自動運航船の本格的な商用運航の実現に向けた取り組みを進めるとともに、女性や60代以上の運転者も働きやすい環境を整備する「ホワイト物流」、外国人材の活用などを推進します。<1⑯ 物流問題の解決に向けた物流革新の推進等>

…保安体制の強化、グランドハンドリング・保安検査員・整備士・操縦士の養成、職場環境の改善、航空大学校や外国人材等の活用等を推進します…<1⑲ 航空ネットワークの維持・活性化>

訪問介護をはじめとした介護職員の賃金を全産業平均まで引き上げることをめざし段階的な取り組みを進めるとともに、離職防止や生産性の向上、人材のすそ野を広げる取り組み、外国人材が働きやすい環境整備、介護職の魅力向上など、あらゆる施策を総動員して介護人材の確保に取り組みます。<3⑫ 老後の安心のために(認知症施策、介護、年金等)>

外免切替については、知識確認問題数の大幅な増加、難易度の上昇、実技試験の充実、短期滞在者の外免切替の禁止など制度の厳格化を進めます。また、外免切替による運転免許取得者の事故件数等に関する調査の実施を推進します。<5⑭ 外国人と安心して暮らせる多文化共生社会>

【立憲民主党】

難民保護に関する政策

難民等の認定と保護、出入国管理・収容制度の問題を抜本的に改善・透明化する「難民等保護法・入管法等改正法」の制定を目指します。<多文化共生 / p.19>

外国人の権利保障や共生に関する政策

「多文化共生社会基本法」を制定し、国民及び在留外国人が、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら強制することのできる社会を形成します。<多文化共生 / p.19>

あらゆる差別の解消を目指し、「包括的差別禁止法」を制定します。<差別解消 / p.19>

国連の「パリ原則」に基づいた人権救済機関を設置します。<差別解消 / p.19>

「ヘイトスピーチ解消法」における取り組みを拡大し、国際人権基準に基づいて、人種などを理由とする差別的言動を禁止する法律の制定など、あらゆる差別撤廃に向けた動きを加速させます。<差別解消 / p.19>

在留管理の強化や送還促進に関する政策 <該当する政策なし>

外国人に関するその他の政策

在留制度全般を見直すとともに、外国人一般労働者雇用制度の整備を推進します。<多文化共生 / p.19>

【日本維新の会】

難民保護に関する政策

偽装難民問題に留意しつつ、難民および難民申請者への医療・食料等の支援強化や難民申請プロセスの改善など、SDGsの考え方に基づき人道的見地から難民問題に取り組みます。<外国人政策 / 477>

外国人の権利保障や共生に関する政策

日本に滞在する外国人の大幅な増加に対応し、災害時における多言語による情報発信システムの整備や、AI通訳技術を活用した避難所での円滑なコミュニケーション支援体制を構築します。<危機管理・防災インフラ / 321>

在留管理の強化や送還促進に関する政策

マイナンバーカードを活用した外国人労働者と家族の在留管理を推進し、国・自治体・事業者の役割を明確化します。就労外国人の生活支援と地域参加の促進により、共生社会の実現を図ります。<外国人政策 / 476>

外国人の無秩序な増加や地域摩擦の弊害を踏まえ、外国人比率の上昇抑制や受け入れ総量規制を含む人口戦略を策定し、司令塔機能の設置および基本法の制定により、外国人政策を国家として一元管理します。<外国人政策 / 479>

無許可営業や文化財被害、試験不正など外国人による違法行為の増加に対応し、入管庁・地方局の体制強化や警察・自治体との連携で迅速な対処を図ります。さらに罰則・送還制度の実効性を高め、帰化審査の厳格化と取消制度創設により、治安と国籍制度の適正化を進めます。<外国人政策 / 480>

医療保険や運転免許、経営・管理ビザなどの制度が一部外国人に集団的に濫用されている現状を直視し、実態調査とビザ条件の厳格化を進め、法令の抜本的見直しにより国民が納得できる制度へ再構築します。<外国人政策 / 481>

外国人に関するその他の政策

二重国籍の可能性のある者が国会議員となっていた事例に鑑み、外国籍を有する者は被選挙権を有しないことを定めるとともに、国政選挙に立候補する者は自らの国籍の得喪履歴の公表を義務づけます。<選挙制度改革 /143>

専門的・技術的分野の外国人については、イノベーションの創出等を通じたわが国経済の成長に資する観点から、積極的な受け入れを図る一方、それ以外の就労目的の外国人については、わが国における賃金水準の向上の阻害、地域社会における摩擦等の弊害を生じさせることのないよう、日本語能力および日本文化の理解等について現行よりも高い水準を満たし、技能水準の継続的な向上等を通じてわが国経済の成長に貢献し得る人材に限って受け入れを行います。<外国人政策 / 475>

安全保障上の観点などから、各級選挙や住民投票における外国人参政権付与については認めない一方、帰化を望む永住外国人のため帰化手続きのさらなる合理化と適正な運用を推進します。<外国人政策 / 478>

【日本共産党】

難民保護に関する政策

難民条約、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の基準など国際人権法を順守し、法務省から独立した難民認定の設置など抜本的な入管法改正、入管庁改革を行います。<5(2)あらゆる分野の人権保障を>

国連拷問禁止委員会などから厳しく批判されてきた長期収容に上限を設定し、人身拘束はかならず司法審査を行います。難民認定申請中の強制送還を可能とする改悪は無効化します。<5(2)あらゆる分野の人権保障を>

戦乱など諸事情で日本に避難した外国人には、ウクライナ避難民と同水準の支援を行います。<5(2)あらゆる分野の人権保障を>

外国人の権利保障や共生に関する政策

ヘイトスピーチの根絶に力をつくします。<5(2)あらゆる分野の人権保障を>

外国人労働者に、日本人と同等の労働者としての権利保障を確立します。育成就労制度は、技能実習から名称変更しただけであり、早急に本人の意向による「転籍の自由」の保障と、労働者の家族帯同を認めるよう抜本的改善をはかります。<5(2)あらゆる分野の人権保障を>

新設された永住権取り消し規定を削除します。<5(2)あらゆる分野の人権保障を>

日本生まれ、日本育ちの子どもとその家族に、実情に即した在留特別許可を積極的にすすめます。<5(2)あらゆる分野の人権保障を>

在留管理の強化や送還促進に関する政策 <該当する政策なし>

外国人に関するその他の政策 <該当する政策なし>

【国民民主党】

難民保護に関する政策 <該当する政策なし>

外国人の権利保障や共生に関する政策

新たに始まる外国人労働者の育成就労制度については安価な労働力の確保策として悪用されないよう、厳格かつ適切な運用を求めます。また、育成就労制度と特定技能制度が一体的な運用となり、日本で働く外国人が特定技能制度2号になると家族帯同で永住できることから、来日する子どもや家族の日本語習得や学校での学習機会の確保等、国が主体的な対策を講じていくよう取り組みます。<[3]8(6)育成就労支援>

ヘイトスピーチ対策法を発展させ、人種、民族、出身などを理由とした差別を禁止する法律を制定します。<[3]12(5)差別の解消とプライバシー保護>

外国人の受け入れは、その能力が存分に発揮され、日本国民との協働・共生が地域社会や生活の現場においても推進されることが大前提です。困難な状況となっている地方における人材の確保、多様な言語に対応したワンストップセンターの整備等、地方自治体などに対する支援を強化します。また外国人児童・生徒の言語支援を強化するとともに不就学・進学の課題に取り組みます。育成就労の制度化にあたり、人権が保護されるよう、労働者としての権利性を高めます。<[3]12(6)外国人との共生>

在留管理の強化や送還促進に関する政策 <該当する政策なし>

外国人に関するその他の政策

外国人介護人材を受け入れていくにあたり、介護福祉士国家試験が日本語のため、合格率が低い状況にあり帰国してしまうケースが多いのが現状です。日本語に合わせて母国語を併記してもらい、資格の取得がしやすい環境を整備することにより、外国人介護人材が将来にわたり日本で活躍しやすい環境を整備します。<[3]10(12)介護福祉士国家試験に母国語併記>

【れいわ新選組】

難民保護に関する政策 <該当する政策なし>

外国人の権利保障や共生に関する政策

入管施設での人権侵害を無くす<5.3 障害、ジェンダー、国籍など当事者・少数者が排除されない社会を!>

外国人の包括的な権利を規定する法律を制定する<5.3 障害、ジェンダー、国籍など当事者・少数者が排除されない社会を!>

在留管理の強化や送還促進に関する政策 <該当する政策なし>

外国人に関するその他の政策

技能実習法及び入管法(外国人労働者低賃金労働を促進、1993年に創設。技能実習制度は現在は「育成就労制度」と呼ばれている)<5.2「移民政策」に反対 ~賛成する者は保守と名乗るな、保身と名乗れ~>

入管難民法改正(「特定技能制度」を創設した改正、2018年)<5.2「移民政策」に反対 ~賛成する者は保守と名乗るな、保身と名乗れ~>

【社会民主党】

難民保護に関する政策

移民、難民を排除するのではなく、多文化共生の社会をめざします。<6 ジェンダー平等・多文化共生社会の実現!>

外国人の権利保障や共生に関する政策

罰則規定のある差別禁止法をつくります。移民、難民を排除するのではなく、多文化共生の社会をめざします。<6 ジェンダー平等・多文化共生社会の実現!>(※再掲)

在留管理の強化や送還促進に関する政策 <該当する政策なし>

外国人に関するその他の政策 <該当する政策なし>

【参政党】

難民保護に関する政策 <該当する政策なし>

外国人の権利保障や共生に関する政策 <該当する政策なし>

在留管理の強化や送還促進に関する政策

外国人政策に関する理念法を整備し、「外国人総合政策庁」を新設して、関係各省庁と連携しながら、受け入れの基準や制度の運用を一元的に管理していきます。単に労働力不足を補う目的で無制限に外国人を受け入れるのではなく、国益を重視し、持続可能で安全な社会を築くための管理型外国人政策へと転換します。<政策3 行き過ぎた外国人受け入れに反対>

外国人労働者の受け入れにあたって、高度な技術や専門知識を持つ人材を優先し、非熟練労働者の受け入れには制限を設けます。また、日本語能力や文化的理解を義務付け、日本社会との摩擦や分断を最小限に抑えます。帰化や永住権取得の要件も厳格化し、日本への忠誠心や生活実態をしっかりと確認できる制度にします。<政策3 行き過ぎた外国人受け入れに反対>

社会保障制度についても、医療保険や生活保護の濫用を防ぐための利用条件を明確化し、日本国民の負担が不当に増えることを防ぎます。外国人留学生への奨学制度なども日本の国益に資する人物に限定し、制度の適正化を図ります。外国人参政権は一切認めず、帰化一世にも被選挙権を付与しない方針を明確にします。<政策3 行き過ぎた外国人受け入れに反対>

外国人に関するその他の政策 <該当する政策なし>

【出典】
自由民主党:自民党の政策2025 https://special.jimin.jp/political_promise/
公明党:2025参院選 政策集 https://www.komei.or.jp/content/manifesto2025/
立憲民主党:参院選挙政策パンフレット https://cdp-japan.jp/files/download/2025/bwtI/rb6O/Wzyl/2025bwtIrb6OWzylGQJPQFRz.pdf
日本維新の会:維新八策2025 個別政策集 https://o-ishin.jp/policy/pdf/ishin_8saku2025.pdf
日本共産党:2025 参議院選挙 基本政策 https://www.jcp.or.jp/web_policy/11419.html
国民民主党:政策パンフレット https://new-kokumin.jp/wp-content/uploads/2025/06/c59c5b70367f9b06b94f5a15c68727d8.pdf
れいわ新選組:マニフェスト https://san27.reiwa-shinsengumi.com/
社会民主党:2025参院選選挙公約 https://sdp.or.jp/27th-hce-sdp/assets/pdf/2025_hce_manifesto_sdp.pdf 
参政党:参院選公約 https://sanseito.jp/sanin_election_27_policy/

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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