アシックス、自動車ハンドルの端革をレザーシューズに

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記事のポイント


  1. アシックスは自動車ハンドルの端革をレザーシューズに再利用した
  2. この取り組みは異業種の自動車部品メーカーと連携して行った
  3. 同社の担当者に開発の経緯と今後の展開を聞いた

アシックスは自動車部品メーカー豊田合成と組んで、自動車ハンドルの端革をレザーシューズ「SKYHAND OG(スカイハンドオージー)」に再利用した。スポーツ用品メーカーであるアシックスは異業種の自動車部品メーカーとどのように連携したのか。プロジェクトを主導した同社スポーツスタイル統括部デザイン部カラー&マテリアルチームに所属する宮本幹也氏に聞いた。(聞き手・オルタナ輪番編集長=池田真隆)

アシックスのレザーシューズ「SKYHAND OG(スカイハンドオージー)」はサステナブル★セレクション三つ星に輝いた。写真左からアシックスの宮本氏と審査委員を務めた一般財団法人持続性推進機構の森本英香・理事長=2025年10月3日、都内会場で

※アシックスのレザーシューズ「SKYHAND OG(スカイハンドオージー)」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2025」の三つ星に選ばれました。
「サステナブル★セレクション」とは、サステナブル(持続可能)な理念と手法で開発された製品・サービスを選定し推奨する仕組みです。

一つ星(★)は、製品・サービスが、持続可能な社会づくりに貢献していることを表します。
二つ星(★★)は、★に加え、企業・組織がサステナブル経営に取り組んでいることを表します。
三つ星(★★★)は、★★の中から特に大きな社会的インパクトを生み出していることを表します。
サステナブル★セレクション公式ページはこちら

――豊田合成との協業は、どのようなきっかけで始まりましたか。

とある講演会で、豊田合成さんからお声がけいただいたことが出発点です。当初はサステナビリティをテーマにした具体的な案件があったわけではありません。

ただ話を重ねる中で、両社とも環境への取り組みを進めたいという思いはあるものの、何から始めるべきか分からないという状況だったことが分かりました。そこで「一緒にできることはないか」というところから議論が始まりました。

――協業が本格化した時期はいつ頃ですか。

コロナ禍の2021年頃です。最初の構想から第一弾の商品が形になる2023年まで、約2年を要しました。反響は想像以上でした。シューズ業界だけでなく、自動車関連、サステナビリティ、化学系など、幅広いメディアに取り上げていただきました。異業種協業という点が注目されたのだと思います。

当初は、B2B企業である豊田合成さんとB2Cの商品開発を取り組むにあたり、これまでにない挑戦となる部分もありました。ただ、実際に形になり、外部から評価を受けたことで、社内の見方は大きく変わりました。異業種と組む意義が共有され、次の挑戦につながりやすくなったと感じています。

第一弾の商品を通じて、社会的な反響やインパクトの大きさが見えていたので、「次に進もう」という流れが自然に生まれました。こうして、このレザーシューズ「SKYHAND OG」ができました。

「SKYHAND OG」は自動車ハンドルの端材を再利用した ©ASICS

■日常的に発生する端材をレザーシューズに

――第二弾「SKYHAND OG」では、何を目指しましたか。

第一弾では自動車の品質基準を満たさなかった材料を使いましたが、第二弾では実際の製造ラインで日常的に発生する端材を使う点に踏み込みました。よりリアルなサーキュラーエコノミーを実現したいという思いがありました。

――環境負荷削減の成果について教えてください。

自動車製造の過程で発生する端材を再利用することで、サーキュラーエコノミーの観点で製品開発できたことが、成果の一つだと思います。材料を新しく生産するにも環境負荷はかかりますから、既にある材料を循環させていく視点を持ち、業界の垣根を越えて協働できた点は環境負荷低減のための大切な一歩と言えると思います。

――廃材を素材として使う上で、最も苦労した点は何でしょうか。

基準作りです。廃棄される材料には明確な基準がありません。虫食いやシワの許容範囲などを一つ一つ定義し、どこまでを価値ある素材とするのかを決める必要がありました。品質以上に、物流や価格設定、法的整理に時間を要しました。

■背景のストーリーを知ることが購入を後押し

――価格設定についてはどのように考えましたか。

価格は1万5400円です。あくまで日常的に選ばれる価格帯であることを重視しました。

――消費者はサステナビリティをどの程度重視していると感じますか。

近年はお客様からのサステナビリティへの取組に関するお問い合わせも増えております。購入の際には、まずはデザインや機能性を重視される方が多いと思いますが、デザインや履き心地に惹かれデザインや履き心地に惹かれて商品ページを見た際に、背景のストーリーを知ることで、購入を後押しする要素にはなり得ると感じています。

――実際のレビューから見えてきたことはありますか。

履き心地の良さや合わせやすさといった評価を中心にいただいており結果としてサステナビリティが自然に溶け込んでいる点を良い結果だと捉えています。

――今後の展開について教えてください。

具体的な計画は公表できませんが、これで終わりではありません。引き続き、可能性を探っています。

――商品を通してサステナビリティをどう伝えていきたいと考えていますか。

前面に押し出しすぎず、知らないうちに価値が組み込まれている状態が理想です。機能性や安全性をしっかり担保し、真摯に情報開示を行うことが、結果として企業価値につながると考えています。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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