米ニューヨークで進む「都市まるごと循環化」計画とは

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記事のポイント


  1. 米ニューヨークでは「都市そのものを設計し直す」動きが活発化へ
  2. 都市政策の上位概念に「循環」を打ち出し、官民連携で取り組む
  3. 1万人以上の雇用創出や数十億ドル規模の経済効果を見込む

米ニューヨークではリサイクル率を上げるため「都市の仕組みそのものを設計し直す」動きが活発化してきた。都市政策は、「出た廃棄物をどう処理するか」という対策が中心だった。循環型に移行することで1万人以上の雇用創出や数十億ドル規模の経済効果を見込む。(米ニューヨーク=古市裕子)

サーキュラーエコノミーの利点などを市民に訴求する

この取り組みを主導するのは、ニューヨーク循環型都市イニシアティブだ。官民連携のイニシアティブで、ニューヨーク市や企業、学術機関、財団などが参画する。

同イニシアティブは環境政策にとどまることなく、政策、投資、産業、金融、人材育成までを含め、都市を丸ごと循環型へ移行させるためのロードマップを掲げた。政策立案、投資誘導、企業活動を連動させ、「どの施策が最も効果的か」を特定し、実装していく考えだ。

例えば、公共調達を循環型に切り替えることによる市場創出やメーカーに回収責任を求める制度などを推進する。修理や再製造を前提とした産業育成、資金を循環型の事業に誘導する金融商品なども検討する。

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循環型経済に移行するロードマップを掲げる

循環経済は「都市競争力」に

こうした制度設計によって、2030年までに1万人以上の雇用創出や数十億ドル規模の経済効果が見込む。循環経済が環境対策だけでなく産業政策として扱われている点が特徴的だ。

同イニシアティブは、「循環経済は環境部門だけのテーマではなく、都市競争力そのものに関わる」という認識を示す。資源の制約や廃棄コスト高を背景に、循環型の都市インフラを持つことが、企業誘致や投資評価にも影響し始めている。

もう一つの特徴は、NPO団体が、政策と企業の間をつなぐハブとして機能している点である。都市の仕組みそのものを変えることを社会貢献と位置づけ、制度設計と事業機会を同時に生み出す。

修理やリユースを前提にした製品設計が求められる

このような都市構造を変える取り組みは、従来の寄付型・支援型の非営利活動とは異なる新しい姿といえよう。

日本企業にとっても重要な示唆が多い。ニューヨーク市場では、製品単体の環境配慮だけでは評価されにくくなっている。回収スキーム、修理やリユースの仕組み、素材循環まで含めた提案が求められる傾向が強まる。

特に日用品、雑貨、アパレル、容器包装分野では都市型循環の中で役割を担う責任が大きい。

サステナビリティが「理念」から「設計」へと移行する中、都市全体を対象にした循環経済の実装は、今後各国にモデルケースとして広がる可能性が高い。

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古市 裕子

ニューヨーク在住。NY Marketing Business Action, Inc代表 (2015年起業)。1995年渡米。NY市立大学大学院国際政治学・国際関係論修士号卒業。ジェトロNY17年勤務の後、独立。日系企業の海外ビジネス進出支援。国連SDGs理念や欧米企業の動向にフォーカス。国連フォーラムNY幹事。NY邦人メディア紙SDGs連載コラムニスト。東京都特定非営利活動法人・在外ジャーナリスト協会(Global Press)所属。拙著【SDGsピボット戦略12事例集/欧米企業が進める連携型・サステナビリティ×次世代×企業価値】など。

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