記事のポイント
1.日系メーカーはマルチパスウェイ戦略の下、現地政府にHV優遇を働きかけ
2.東南アジア主要国ではEVの販売シェアが、HVを上回り始めている
3.中国EVの開発軸はスマホや家電とつながる「生活一体型」へ
東南アジアで電気自動車(EV)の普及が加速する中、日系自動車メーカーはハイブリッド車(HV)を中心に複数の動力源を活用する「マルチパスウェイ戦略」を掲げる。現地政府に対しても、HVをEVと同様に優遇するよう働きかけてきた。一方、中国ではEV開発の競争軸が、航続距離の長さからスマートフォンや家電とつながる「生活一体型の車両」へ移りつつある。日系の全方位戦略は「スマホ化」する中国EVに対抗できるのか。(オルタナ副編集長=京正裕之)

英国の気候変動シンクタンク、インフルエンスマップは今年6月、日本と中国の主要自動車メーカーが新興国での気候政策にどう関与しているのかを分析した結果を公表した。対象の企業は日本のトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、スズキと、中国のBYD、吉利汽車(ジーリー)、奇瑞汽車(チェリー)、上海汽車集団の8社だ。分析対象国はブラジル、コロンビア、インドネシアで、3カ国と日中の業界団体も分析対象とした。
調査では、日中メーカーの政策関与への違いが浮き彫りになった。インドネシアでは、インドネシア自動車製造業者協会(ガイキンド)とトヨタ、ホンダ、日産、スズキが、EV向けの優遇措置を内燃機関(ICE)搭載のHVにも広げるよう一貫して主張してきたという。一方、BYDはEVへの優遇措置の継続を支持した。
結果として、2024年12⽉には「低炭素排出⾞」を対象とする減税措置が導⼊され、HVやプラグインハイブリッド車(PHV)も対象となり、2025年12⽉まで延⻑された。
日系メーカー側の主張を特徴づけるナラティブが「マルチパスウェイ」だ。新興国政府が電動化を進める上で、EVにだけ移行するのではなく、HVやPHV、バイオ燃料など、各国のエネルギー事情やインフラに応じて複数の技術で脱炭素化を進める考え方だ。
インフルエンスマップのアナリスト、土肥周平氏はオルタナの取材に「調査では、マルチパスウェイ戦略は、インドネシアを含む複数の市場において、既存メーカーにとって有利なICE搭載のHVなどの技術への政策支援を後押しするために用いられていることが確認されている」と指摘した。
■業界団体の政策関与、日系の影響色濃く
■東南アジアではEV販売がHVを上回る傾向に
■航続距離・空間・智能化の競争の先へ
■スマホメーカーのEVが人気、生活と一体化

