自動車メーカーの気候対策、なぜトヨタが最下位か

グリーンピースは、自動車市場の80%を占める大手メーカー10社の気候変動に関する目標と行動を調査しました。その結果、すべての企業が十分な行動をとっておらず、また十分な速度で変化をしていないことがわかりました。その中でも特に低い評価だったのは、日本を代表する自動車メーカーのトヨタでした。

評価の仕方や、気候変動対策に貢献するために車業界が何をできるのか、解説します。3つの柱に基づいて企業の気候変動対策を評価し、気候スコアを算定しました。

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1. 内燃機関(ICE)の廃止

ICE車とは、ガソリンやディーゼルなどの化石燃料を使用する、従来の自動車のことです。ICE車のライフサイクルで排出される温室効果ガスの80%は、走行中に発生します。そのため、自動車メーカーが気候変動対策のために最も優先すべきは、ICE車=化石燃料車の製造を減らし、早急に廃止することです。

調査の結果、2035年よりも早くにICE廃止を計画している企業はありませんでした。ダイムラー、フォード、日産、ルノー、ステランティス、トヨタ、フォルクスワーゲンの自動車グループ10社のうち7社は、主要ブランドを展開するどの市場においても、ICEの完全廃止時期を定めていません。

2. サプライチェーンの脱炭素化

自動車のライフサイクルで排出される、温室効果ガスの残り20%は、製造時に排出されます。例えば、排出量の大部分を占める鉄鋼に加え、プラスチックや、バッテリーに使用されるコバルトなど、数千種類もの材料の製造が挙げられます。

世界の気温上昇を1.5℃未満に抑えるため、具体的な炭素削減目標を詳しく設定しているのは、わずか2社でした。

3. 資源の持続可能な利用

電気自動車(EV)に搭載されるバッテリーや電子機器は、大量の資源を必要とし、潜在的に深刻な環境汚染のリスクがあります。そのため、自動車メーカーは、バッテリーの再利用、バッテリーの素材に使われる金属の回収、より効率的な電池技術の開発に注力し、資源の使用量を削減することが重要です。

しかし、リユース・リサイクルに十分な投資をしている自動車メーカーは1社もなく、明確な目標を掲げている企業も1社しかありませんでした。

■トヨタが最下位の理由とは

日本の自動車メーカーであるトヨタは、世界最大かつ最も知られた自動車会社のひとつです。2020年には、世界中で約900万台を販売しました。世界で販売されている車の約10台に1台がトヨタ車という計算になります。同社が2020年に全世界で排出したCO2は、568万トン相当で、この量の炭素を吸収するためには、約160平方km、八王子市くらいの広さの森林が必要です。

トヨタは、気候危機を止めるためのグローバルリーダーになる要素を持ち合わせており、そうなる責任があります。しかし、今回の調査では、トヨタの気候対策の評価は、最低のFダブルマイナスとなりました。その理由は以下の通りです。

ICEの段階的廃止:トヨタは、世界のどの市場においても、化石燃料を使用した車を廃止することを約束していません。また、2020年の全販売台数に占めるバッテリー式電気自動車(BEV)と燃料電池式電気自動車(FCEVs)の販売台数の割合が、最も少なかったメーカーです。

サプライチェーンの脱炭素化:トヨタは、Science Based Targets(SBT-企業版1.5℃目標)に参加していません。これは、気候科学に基づいて、企業が排出量を削減するための条件を設定するグローバルプログラムです。トヨタは、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを約束しましたが、その道筋は明確ではなく、気温上昇1.5℃未満に対応した炭素削減計画を示していません。

資源の持続可能性:トヨタは電池のリユース・リサイクルに努めていますが、年間売上高に占めるEVの割合は非常に小さいため、ほとんど効果がありません。

温暖化対策へのロビー活動:トヨタは、各国政府に対し、排ガス規制の緩和やICE車の廃止を加速させる法案にマイナスな影響を及ぼすロビー活動を行っていることがわかっています。

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国際環境NGOグリーンピース・ジャパン

グリーンピースは、世界規模の環境問題に取り組む国際環境NGOです。問題意識を共有し、社会を共に変えるため、政府や企業から資金援助を受けずに独立したキャンペーン活動を展開しています。本部はオランダにあり、世界55カ以上の国と地域で活動し、国内だけでは解決が難しい地球規模で起こる環境問題に、グローバルで連携して取り組んでいます。執筆記事一覧

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