人権がトレンドとなる時、映画祭をきっかけに

夏が始まろうという時、愛知県民の映画好きとしては「あいち国際女性映画祭」の開催が気になり出します。中京圏で唯一と言われる国際映画祭が9月上旬に開催されるからです。1996年に第1回目として産声をあげた、この映画祭は、世界中で活躍する女性監督を招待、女性の生き方などをテーマとした作品や女性映画監督の作品を上映してきました。(愛知学泉大学准教授=三輪 昭子)

そんな映画祭で、2017年注目され、評価の高い映画『彼らが本気で編むときは』の上映が目を引きます。女性監督の荻上直子監督作で生田斗真主演の日本映画です。

荻上監督と言えば、『かもめ食堂』や『めがね』という作品で多くの女性中心に鑑賞者を魅了して来ました。その監督の5年ぶりとも言える新作が本作で、LGBT(同性愛や性同一性障害などの性的少数者)を真正面から挑んだ作品でした。

LGBT映画から共感を得て

個人的に映画が好きで、いま観るべき作品をチェックしつつ2月上旬、『沈黙』を鑑賞する際、予告編で知った本作『彼らが本気で編むときは』でしたが、その事前情報を全く得ていませんでした。

そんな中で、やっと1ヶ月以上後の3月下旬に本作を観ることができました。カラダ全体に染み渡る共感と満足感に満たされ、この1年間に観た作品のベストテンに入るだけのものと、感じました。

本作は、体の性と心の性が一致しないトランスジェンダーのリンコと育児放棄された少女トモ、リンコの恋人でトモの叔父のマキオが織り成す奇妙な共同生活を描いたドラマです。生田斗真さんがトランスジェンダーという難しい役どころに挑み、桐谷健太さんがその恋人役を演じています。

11歳の女の子トモは、母親のヒロミと二人暮らし。ところがある日、ヒロミが育児放棄をして家を出てしまいます。ひとりぼっちになったトモが叔父マキオの家を訪ねると、マキオは美しい恋人リンコと暮らしていました。

元男性であるリンコは、老人ホームで介護士として働いています。トモは、そんなリンコが母親よりも自分に愛情を注いでくれることに戸惑いますが、次第にそういう生活に馴染んでいきます。

この作品には、折に触れてリンコの幼少期の頃の情景が描かれています。そこからリンコが現在の姿になっていく経緯が自然と受け入れられる構成になっています。

リンコの母親の寛容性と、愛情の深さも伝わってきます。そんなリンコと彼女のことを精一杯愛する叔父マキオたちと一緒に過ごすわけですから、トモも周囲に寛容な視線で見たり、考えたりできるようになっていくのです。同じ学校の児童との関わりでも、それが発揮されていくのです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #LGBT

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