「欧州企業と人権(4)苦情処理メカニズム」 ――下田屋毅の欧州CSR最前線(28)

■ 人権侵害に関するデータをあえて公表

企業は一般的に人権侵害を報告したがらない傾向がある。それは、法の抵触を危惧することと、名声に傷がつくのを恐れてのことである。しかし、それらを踏まえた上で、内部告発を含む「苦情処理メカニズム」の人権侵害に関するデータを公表する企業が出てきている。

ザ・コカコーラ・カンパニー(本社アトランタ)では、「苦情処理メカニズム」を機能させるため「人権と職場の権利方針」についてトレーニングの実施や、コミュニケーション・教育を強化した。

従業員は、「倫理ライン」を含む多数のルートを通じて報復の心配なしに、違反についての報告をすることができ、すべての質問は、秘密裏に対処され、全ての懸念について会社が調査する。

2010年の苦情件数は118件だったが、2011年は、426件と増加した。

2011年の苦情報告の内訳は、1.報復と嫌がらせ含む差別 211件(全体の50%)、2.労働時間や賃金 114件(同27%)、3.職場の安全保証 43件(同11%)、4.職場の安全衛生 36件(同9%)、5.結社と団体交渉の自由 2件(同1%)、6.強制労働 3件(同1%)。

この件数の増加は、子会社であるコカコーラエンタープライズ社の北米事業の買収による約6万5000人の従業員の追加、そして「人権と職場の権利方針」に関して、コミュニケーション・教育の実施による意識の高まりによって、「苦情処理メカニズム」が機能するようになってきていると自社分析している。

■ 社外のステークホルダーにも「苦情処理メカニズム」を

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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