インタビュー:「対話」が企業を生かす―「法令順守」は誤訳

語り手: 新日本有限責任監査法人CSR推進部長/公認会計士
大久保和孝
聞き手: オルタナ編集長 森 摂

「コンプライアンス」という言葉を知らないビジネスマンはいないだろう。しかし、新日本有限責任監査法人の大久保和孝CSR推進部長は、これを「法令順守」と訳すのは誤訳だと指摘する。真のコンプライアンスとは、社会や地域と「対話」し、社会課題を解決するために企業努力を重ねて社会との調和をはかっていくことだ。そこに、本来の意味のCSRが存在する。(オルタナ本誌30号から転載)

─大久保さんは、ずいぶん以前から「コンプライアンス=法令順守」は誤訳だと仰っていましたね。コンプライアンスを「ただ法令を守れば良いこと」と思い込むと、「ルールを守ることが全てだ」という誤解に陥ります。

社会の価値観が日々、大きく変化する中で、決められたルール自体がその時々の社会の価値観・コンセンサスを反映しているとは限りません。

こういう時代には、「ルールは自ら創造」していくことです。大切なことは、ステークホルダーとの対話の中で、納得のいくものを模索していくプロセスです。それが本当の意味での「コンプライアンス」だと思います。

例えば、「コンプリートガチャ」の問題は、射幸性をあおっている問題が以前から指摘されていましたが、明確な法規制はありませんでしたし、ゲーム各社とも具体的な対策を打たなかった。しかし、法的な規制がないから、何をしても良いという話ではありません。

事実、消費者庁の指摘もあり、ゲーム各社とも今年5月にサービスを終了しました。人気もあり、社会からも評価されていたのですが、今にして思えば、業界は事前に消費者団体などと対話を重ね、落としどころを作っていくべきだった。それが「ルールの創造」です。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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