「直接対話の力」【CSRコミュニケーションのこれから】

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次に、イギリス企業の取材から紹介する。数百人規模の小さな会社なのでCSRの専任部署はないが、環境や安全対策は進んでおり、SGS(※1)の各種認証も取得している。

質問を投げかけていく中で、どうも話が上手くかみ合わないなあということが何度かあった。1つ例を挙げれば、CSR調達は重要課題なのでどのように対応しているのかを尋ねた時のことだ。こちらの意図がなかなか伝わらず期待する反応が返ってこない。何度か質問を繰り返すうちに、アンケート調査を実施しているというのでその調査票を見せてもらった。品質や環境と並んで児童労働などの人権・労働に関する質問も入っている。彼らからすると当たり前の調査項目であり、こちらが強調して話す理由にピンとこなかったのである。

実はフランス企業でも同様のことが何度もあったのだが、ここで読者に伝えたいことは、たとえはじめはすれ違いがあったとしてもそのままで終わることはないということである。対話を重ねることで相手側もこちらの意図を理解しようと努力してくれる。そして、「ああそうか、私たちとは○○の解釈が違うがそれを理解できた。協力も問題ない」と両者の落としどころが見出せるように調整していけるということだ。

情報伝達の手段としてCSRレポートやウェブサイトが重要なツールであることは変わらない。しかしながら、どれほど立派なメッセージやレポートを用意できたとしても、本当に意思疎通しなければならない相手に対しては、直接対話に勝るものはないと改めて実感するのである。

最後にもう一つ対話のワザを紹介しておく。フランス企業での会議終了後に、出席していたコンサルタントと挨拶を交わした。前職はグリーンピースだよ、とさらりと自己紹介をしてくれた。企業側も彼のキャリアを買って仕事を依頼している。NGOへの対応を知るには、NGOを最も理解している相手と対策を練ることである。コミュニケーションのしたたかさも学んだ取材であった。

※1 SGS スイスに本社を置く世界最大級の認証・検査・分析機関

【いまづ・ひでのり】入社以来、トッパンアイデアセンターにて企画制作業務に従事。1999 年から環境コミュニケーションを担当し、現在はCSR を軸にコーポレートコミュニケーション支援を行っている。CSR 報告書アワード最優秀賞や企業情報サイトランキング1 位など担当したクライアントで多くの実績を上げる。ステークホルダーダイアログのファシリテーターも10 社以上で行っている。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第8号(2013年5月7日発行)」から転載しました)

今津 秀紀氏の連載は毎月発行のCSR担当者向けのニュースレター「CSRmonthly」でお読みいただけます。詳しくはこちら

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2014年8月22日(金)11:45

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