ただ、これを販売者の責任というには酷すぎる面もある。実はミネラルウォーターの輸入量は2007年の約58万キロリットルをピークに、2015年は35万キロリットルと9年で40%も減ったのだ(日本貿易統計)。
一方で、国内生産のミネラルウォーターは2007年の192万リットルから2015年には303万リットルと、同じ時期に58%も伸びた。ことミネラルウォーターについては「輸入から国産へ」の流れは顕著だ。
キリンの見解は「1L for 10Lは、当社のCSVとは違った意味合いとしてとらえていた」(同社CSV本部コーポレートコミュニケーション部の大関秀則氏)。
だが、キリンは日本で初めてCSV経営を全面的に掲げた企業であり、「1L for 10L」についても、もう少し整合性が取れた説明を社内外にすべきだった。今後は、CSVの文脈に沿った、より戦略性が高い社会的事業を模索することになろう。
二つ目の課題は、支援される側に立った視点だ。キリンビバレッジの資料によると、2007年から2015年までの9年間で、支援総額は2億8400万円に上った。これにより支援対象のマリ共和国の住民数は28万人に達した。
もちろん、これもそれなりの数字で、評価すべきだろう。「今後も10年以上にわたって井戸のメンテナンスを続ける方針」(大関氏)だという。
一企業に途上国の問題をすべて負わせるわけにもいかないが、細々とでも、あるいは形を変えてでも、さらに長い期間において支援を続けることの重要性がもっと議論されてよいだろう。CSR/CSV活動は長ければ長いほど、社会満足度(SS)が高まり、本業へのより大きなリターンが期待できよう。
三つ目の課題は、私たち消費者の行動だ。企業にとっても、自社事業の発展につながるのであれば、より長期的にCSR/CSV活動に取り組む理由ができる。それを支えるのは、私たち消費者だ。