ジャパン・プラットフォーム 失敗の本質②

原田勝広
オルタナ論説委員
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[論説委員コラム]

ジャパン・プラットフォーム(JPF)は政府、経済界、NGOの「三位一体」を掲げてスタートしたが、残念なことに本来あるべき姿からは遠のくばかりだ。JENやアドラ・ジャパンの不正を見逃してきた要因も元をたどればJPFのガバナンスの欠陥にたどりつく。

■問われるガバナンス

JPFは当初から公になっていないガバナンス上の重大な不備を抱えてきた。一つは、大きな権限を持つ総会の正会員20のうち半分近くをNGOで占めていること。最近、NGOリーダーの不祥事を批判された際、一部のNGOがこの組織票をたのんで緊急総会で意に沿わぬ理事の解任に動くことを検討しようとしたことがある。この時は急きょ臨時理事会開催という先手が打たれ、ことなきを得たが、総会の構成はいびつなままだ。政府、企業関係者、有識者など他セクターとのバランスを図り、公正な運営が望まれる。

もう一つ、こちらの方が問題だが、NGOが実施するプロジェクトの案件審査、つまりODA資金、民間からの寄付金の配布先は常任委員会で審議し決定するが、委員長がNGOであり、委員にもNGOが入っているなど資金の出し手と受け取り手が重なるいびつな形になっている。審議プロセスも不透明だ。アフガニスタン・パキスタン人道支援プログラムを評価する外部コンサルタントの報告書なども「(事前の)予定調和によるJPFの助成金配分は実施能力や成果が反映されないという不満がくすぶる」と指摘している。

■予定調和ではなく競争原理導入を

予定調和と呼ばれる事前調整については、かつてNGOによる「談合」ではないかとの批判もあった。本来であれば委員会では競争原理を導入し、その団体の経営状態をチェックしながら優れたプロジェクトに助成金を充てるべきである。最近は改善されたようだが、仮に事前の行き過ぎた調整で、一部のNGOが独占したり不適切なプロジェクトに資金が分配されるとしたら、不公平だし、税金の無駄遣いとの批判は免れない。

決定プロセスの不可解さは利権にもつながりかねない。JPFにまつわる根強いうわさの一つに「常任委員会の委員長に就任したNGOが助成金を一番沢山もらっている」というものがある。これまで代表を務めたのは順にピースウィンズ・ジャパン、難民を助ける会、JENだ。うわさの真偽は不明だ。是非、委員長の任期期間中の助成額を公表してもらいたいものである。

今回、JENとアドラ・ジャパンの不正が明らかになったが、こうしたNGOの不正、処分について審議するのも常任委員会というのはおかしなことである。アドラの不正について審議するのに委員としてアドラが座っている。これでは、いつまでたっても処分が行われないわけである。

■求められる透明性、説明責任

その常任員会であるが、最近、またミソをつけた。企業からの寄付について、これまでNGOは助成分の5%をオーバーヘッド(間接費)として受け取っていたが、これを一方的に10%に値上げしたのだ。NGOには都合のいい話だが、さすがに、理事会で「それは常任委員会の越権行為。本来、理事会で協議すべき案件」と待ったがかかった。

ODA資金は国民の税金であり、経済界の寄付も貴重な利益から出されている。JPFの再生を図るなら、ガバナンス改革が不可欠だ。透明性を確保し説明責任を果たさなければ社会からの信頼の回復は望むべくもない。この点は良識あるNGOの間からも「プロジェクトの案件審査では当該のNGOは一時的に席を外すなどの工夫はしてきた。しかし、誤解や不正を生みやすい仕組みやガバナンスは変えるべきだ」との声があがっている。

資金の分配を行う常任委員会は外部の客観的な立場にある人、例えばNPOの専門家、国連関係者、学識経験者など利害関係のないメンバーで構成すべきだろう。かつては企業、経団連、財団、メディアも中に入れていたが、いつの間にかいなくなりNGOの仲間内で固めている。理事会や常任委員会は、NGOの活動がちゃんと行われているかどうかを検証することが必要である。

審査プロセスも事前の過度の事前調整は排し、明確な採択基準に基づく競争原理を導入した方が納得が得られるだろう。それでないと、切磋琢磨もイノベーションも生まれない。不正を予防すること、それでも不正が起こった場合はしっかり処分し自浄能力があることを示すことが期待される。

■岐路に立つ日本のNGO

日本を含む先進国のNGOは今大きな岐路に立っている。NGOの発展段階でいうと現在第4世代の段階に入っており、1970-80年代以降、途上国へ出かけてBHN(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)プロジェクトやコミュニティ能力向上活動を展開していた先進国のNGOは役割が変わってきている。途上国のローカルNGOが力を付け、開発についても自分たちでできるようになったからだ。

欧米の主要なNGOは世界各地に支部を設け、現地人のスタッフを取り込むことで新たな協力体制を模索している。日本のNGOはどうするのか。内向きの日本のNGOは海外展開が遅れているし、人材も育っていない。

JPFは市民社会を巻き込み社会を変えて行こうという仕組みだったのに一体どうしたのか。なぜODA資金に過剰な関心を寄せ、それを獲得することに腐心する組織になってしまったのか。これでは誰の共感も呼ばない。JPFはファンドソース(資金源)ではない。いろんな人たちの協力の土台(プラットフォーム)のはずである。原点に立ち返り、しっかりしたガバナンスのもと社会に信頼される将来像を目指すマインドセットが求められる。

原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

2018年11月5日(月)9:00

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