サステナビリティ経営の質を見極める 3

企業活動は必ずしも戦略的に行われるものではなく、状況への必死の対応の積み重なりや、偶発的な機会の訪れなどで、意思決定がされていることも多くあると思います。同じように、企業の社会貢献活動についてもそれらが戦略的でない、事業と関係がないと言って切り捨てることには違和感があります。

善行は善行であり、それ自体は当然評価されるべきだと思います。ストーリーの重要性が一層高まっていますが、だいたい物事は筋書き通りにも進みません。事実としてストーリーに当てはまらない活動や重要な出来事は多々あります。

きれいにストーリーをまとめることより、ストーリー通りにいかない場合にどうするか、いわゆるレジリエンスを感じる報告が信頼できるのではないでしょうか。その意味では、リスク情報とその対応は極めて重要な情報になるかと思います。

報告する際には、なぜそれをしているのか、どういう効果や課題があるのか、といった観点を伝えることでそれ自体の持続性が促進されるとは思いますが、あまり目的・効果でがんじがらめにしてしまうのも違和感を覚えます。

戦略や事業とは異なるコンテキスト、意味の分からない信念、しかしそれでもあると良いし、その企業らしいもの、そういった「らしさ」や「ムダ」、そして「個性」が、企業にはあっても良い(というか必ずそれはある)のではないでしょうか。そういった矛盾を包摂して多元的な構造を表現していく気骨も欲しいところです。
 
従って、この項で述べたいことは少しこれまでお伝えしてきたことと矛盾しますが、無駄や矛盾が一切感じられず、全てが無駄なく結びつけられたストーリーになっている統合報告は、逆に信頼できない気がします。

・統合報告に最も必要な事

nakahata_yoichi

中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..