英首相が「気候危機」対策で米大統領と訣別

ジョンソン首相はトランプ米大統領と仲が良く、ともに国内での「分断と対立の申し子」として政治的パワーを高めてきた二人である。ジョンソン首相はトランプ大統領の地球温暖化懐疑派に同調しているのかと思わせる部分もあった。前述の「2040年規制」は、テリーザ・メイ前首相が打ち出した方針だった。

ところが、こと「気候危機」問題では、ジョンソン首相は完全にトランプ大統領と袂を分かつたようだ。これは大きな歴史的転換点とさえ言えよう。

もう一点重要なのは、これまで米国でも日本でも「保守=気候変動対策に後ろ向き」という図式があったが、ジョンソン大統領は保守党であることだ。つまり保守政権であっても、気候変動に先鋭的な動きが出てきたことは、日本の政治力学にも大きな影響を与える可能性がある。

日本のメディアには「HVも販売規制に組み込むことで、HVを得意とする日本メーカーの英国での生産・販売計画は見直しを迫られそうだ」として、日本車いじめではないかとの見方もある。しかし、筆者には、特定の自動車産業を狙い撃ちにするよりも、「気候危機に対応せざるを得ない首相の危機意識」が透けて見える。

それは首都ロンドンを流れるテムズ川流域で近年、毎年のように起きる水害や浸水が深刻化していることだ。2019年8月に発表されたシミュレーションでは、ウェストミンスター宮殿やロンドン塔などが最大30フィート(約9メートル)も浸水する可能性が発表されたこともあろう。

日本の国会や首相官邸は比較的高台にあり、東京が水没するとすればまず江東区や江戸川区とされる中で、政治家の危機感は高いとは言えない。

■英首相官邸や英国議会も水没の可能性へ

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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