モーリシャス原油流出事故で日本に危機感はあるのか

世界の環境対策を変えた「バルディーズ号事件」

実は、「バルディーズ号事件」はその後の世界や日本の環境の取り組みに大きな影響を与えた。この事故をきっかけに同年、米国の環境NGO「環境に責任を持つ経済主体の連合」(セリーズ)が、環境保全に関して企業が守るべき「10の倫理原則」を発表した。

すなわち1)生物圏の保護 2)天然資源の持続可能な利用 3)廃棄物の削減と処分 4)エネルギーの保全 5)リスクの低減 6)安全な商品とサービス 7)環境の復元 8)情報提供 9)経営陣の参加 10)評価と年次監査ーーの10原則だ。

この原則は当初「バルディーズ原則」と呼ばれ、後に「セリーズ(CERES)原則」と名称を改めた。セリーズには、環境活動の専門家や企業の担当者、環境保全を推進する投資家グループらが多く参加した。

セリーズ原則を受け入れた企業への投資を奨励することで、環境保全型の企業を金融面で支えた。つまり、今日の「ESG投資」の草分け的な存在だ。このころは「社会的責任投資」と呼ばれ、その後、「サステナブル投資」や「ESG投資」と名前を変えてきた。

セリーズ原則は、企業によるその後の環境への取り組み、とくにISOなどの環境マネジメントシステムや環境監査の仕組みづくりに大きな影響を与えた。日本では、1991年に民間有志がバルディーズ研究会を結成し、原則の理念を広めるための活動を行った。(参考記事「バルディーズ原則(CERES原則)とは」

この研究会(略称:バル研)は、国内の環境専門家の「第一世代」が数多く参加した。彼ら彼女らが、日本の環境報告書や、2000年代以降のCSRレポート、サステナビリティレポートの流れを作ったと言っても過言ではない。

1997年には、セリーズを母体として、企業の持続可能性に関する報告書(CSRレポート/サステナビリティレポート)における国際的なガイドラインを策定することを目的としたNGO「グローバル・リポーティング・イニシアティブ」(GRI)が立ち上がった。

興味深いのは、これらの流れが「業界横断型のネットワーク」で形成され、そこに企業の環境担当者や多くのNGO、大学関係者らが参加したことだ。いまでも企業のサステナビリティ/CSR報告書はGRIが定めた開示手法が基本になっている。

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2020年8月14日(金)0:06

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