「志」を求める若者たち(17) 社会貢献のインフラを増やす――ソーシャルエナジー

社会貢献はしたいが、きっかけがわからない人は多い。そこで、障がい者が作った食材をネットショップやカフェで提供し、食べるだけという「美味しい社会貢献」で社会貢献の間口を広げる男がいる。勝算は。(聞き手 今一生)=文中敬称略

木村知昭(35歳) ソーシャルエナジー株式会社 代表取締役。現ワタミの社長室でCSR活動に携わった後、スクール・エイド・ジャパンの監査職等を経て現職。

(本誌からの続き)

――純米大吟醸のみを製造している山口県の旭酒造(株)さんと横浜市の授産施設、社会福祉法人 横浜愛育会「おおぐち工房」さんとのコラボ商品「獺祭(だっさい)・バニラクッキー」は、取材の際に1個買って食べてみましたが、なるほど「サクっとした食感の中に、ほんのりと純米大吟醸の香り」で、お酒にも合いそうですね。

木村 もともと、酒粕の利用法を模索しているタイミングで、旭酒造の桜井社長出会い、昨年(2010年)の11月に商品化したものです。

木村知昭さん

これは、「美味しい社会貢献プロジェクト」のプロデュースによる新商品開発の第一弾になるものですが、酒粕についてはマドレーヌやパウンドケーキなど他にも使い勝手があると思いますし、そうした新商品の製造を受注できる施設を増やしたいと考えています。

実際、生産力があっても販売力がなく余ってしまうので生産量を増やせなかったり、「納期までに大量の商品を作ることに自信がない」と言う施設は少なくないんですね。

もっとも、これまでうちが協働してきた施設の方々は意識が高くて、本当に良いものを作り、本気で売ろうとしてくれていますが…。

――これは福祉業界ではよく聞く話ですが、せっかく大量発注できる仕事の話を持ち込んでも、「うちでは納期を守る自信がない」という事情で断られてしまうという傾向は、21世紀の今なお珍しくないようですね。一部では講習会を開催するなど、食材の製造技術に向上心を持っている障害者や施設の方も増えていますが、同じエリアの施設どうしで互いに助け合って、施設グループ全体で納期を守れる仕組みを作っていってほしいですね。

獺祭・バニラクッキー

木村 「獺祭・バニラクッキー」は売れ筋になると見込んでましたが、発売後2カ月が過ぎ、毎回製造分が売り切れてしまう人気です。ただし、今現在このクッキーを一番広めていただいているのは、旭酒造㈱さんなんですね。

各地での獺祭のイベントや試飲会での試食や販売、メディア取材での案内など積極的にご協力頂き、障害者の仕事を増やすお手伝いをして頂いています。

――「酒粕クッキー」自体は珍しくなく、ハンドメイドで作れるものですが、その酒粕が純米大吟醸しか作らない酒造元のものであるというブランドが、美味しさを保証してくれていますね。その美味しさへのこだわりが、ソーシャルエナジーの商品開発のキーなのでしょう。酒粕はビタミンB群やアミノ酸を豊富に含んだ栄養の宝庫で、美容にも良いし、「獺祭・バニラクッキー」はクッキーなのに酒好きも思わず手が出る商品です。

木村 ソーシャルエナジーカフェでは、「獺祭・バニラクッキー」以外にもたくさんの授産品の食材を取りそろえていますので、ぜひみなさんに足を運んでいただきたいです。また、来店が難しい方には、ネットショップ「美味しい社会貢献」でも、全国の福祉施設での生産された食品を販売しています。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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